研究実績の概要 |
これまで取り組んできた主要な「無水」マントル鉱物(olivine, enstatite, garnetおよび対応高圧相等)に関する先端NMR測定、ラマン測定、第一原理計算などにより得た水素の置換機構や水素結合及びその他の局所構造的特徴をさらに解析し、水の高圧マグネシウムケイ酸塩鉱物における存在状態の系統性を検証し、国際誌に投稿するために論文を準備している。水素のSi欠陥における存在が検証したほとんどの高圧鉱物で確認され、また、水素のSi欠陥における配置様式並びに水素結合強度は、結晶構造並びに置換サイトにより、大きく異なることが分かった。特に水素結合の強い水素欠陥については、一般的によく用いられる赤外吸収分光法よりも、1H NMRの方が定量的に解明する上で、メリットがあると言える。 また、水素の振る舞いのカチオン依存性を理解するために、亜鉛ケイ酸塩系についても調べている。前年度は天然hemimorphite(Zn4Si2O7(OH)2・H2O)を出発物質に、高温高圧下で地球深部沈み込み帯に存在すると思われるphas Aと同じ結晶構造を持つZn-phase A(Zn7Si2O8(OH)6)(+pyroxene)を発見し、国際誌へ論文を投稿した。査読者意見から新たにZn-phase Aの単一相試料の合成に取り組み、そのために、まずはZn(OH)2の合成を行った。なお、Zn(OH)2自体は、Mg(OH)2との対比から水素の振る舞いのカチオン依存性に関する洞察を提供するため、第一原理計算や顕微ラマン測定を実施し、高圧下での相転移を明らかにした。また、マグネシウムケイ酸塩系と同様、高温高圧下で合成した「無水」亜鉛ケイ酸塩鉱物の1H, 1H-29Si NMR測定結果から、水素欠陥の存在が推定された。 これらの研究成果については、研究期間終了後も、引き続き国際誌への投稿に向けて取りまとめる。
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