研究課題/領域番号 |
17H01176
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
高井 研 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 分野長 (80359166)
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研究分担者 |
矢野 創 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (00321571)
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (00512906)
西澤 学 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (60447539)
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80616433)
上野 雄一郎 東京工業大学, 理学院, 准教授 (90422542)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 原始海洋 / 原始大気 / 生命の起源 / アンモニア態窒素 / 含窒素有機物 / 深海熱水 / 隕石衝突 |
研究実績の概要 |
本研究では、 (i)弱還元型大気での紫外線照射+放電実験と(ii)原始海洋環境での二価鉄や熱水による還元反応を再現した実験によって、原始地球環境での無機・有機窒素化合物の生成・変換の量論、反応速度、安定同位体特性を決定することを目的としている。また、(iii)世界初の詳細な開放系隕石ー海水衝突実験を行い、隕石に含まれる宇宙起源難溶性複雑有機物の無機化や低分子化(可溶化)プロセスや大気N2からの含窒素有機物やアンモニア態窒素の生成プロセスの反応速度、安定同位体特性を明らかにすることも目的としている。 平成29年度には、東京工業大学地球生命研究所において弱還元型大気での紫外線照射+放電実験を行い、分子状窒素からのNOxの生成が観察されただけでなく、従来紫外線照射+放電実験では生成されないと考えられてきたアンモニア態窒素の生成が観察されるという興味深い結果を得た。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)において高温高圧熱水実験装置を用いた模擬原始海水中でのアンモニア態窒素や含窒素有機物生成を検証した。この実験においても、NOxの還元によるアンモニア態窒素の生成のみならず分子状窒素からのアンモニア態窒素の生成が観察されるという興味深い結果を得た。 さらに平成29年度には、JAXA・ISASの垂直型超高速衝突実験装置と新しく開発された隕石ー海水衝突反応装置を用いた世界初の固体ー液体間衝突実験を行った。種々の隕石を使った実験の結果、隕石中の有機物は海水中での微粒子化と分散が衝突時に活性化することが示唆された。宇宙起源有機物は通常の海洋環境では化学反応性に乏しいため、化学進化に寄与しにくいと考えられてきたが、海洋衝突によって反応性に富み、酸化還元状態の異なる複数の水溶性窒素化合物を大量に供給する媒体であることが本研究から示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年度計画通りに実験・分析を進めることができ、各実験系において従来の予想を覆すような革新的な結果を示唆するような興味深いデータを得た。一方、すべての実験系において、予想外のデータが得られたため、その結果の再現性の確認や新たな生成メカニズムの検証実験が必要となったため、速やかな研究成果の発表には至らなかった。計画を上回るデータを得たことと計画外の検証実験が必要となったことを合わせて考えた場合、本研究は順調に進展したと結論付けることでできる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の弱還元型大気での紫外線照射+放電実験の結果から、分子状窒素からのNOxの生成が観察されただけでなく、従来紫外線照射+放電実験では生成されないと考えられてきたアンモニア態窒素の生成が観察されるという興味深い結果を得た。これは極めて新規性の高い結果であるため、現在多様な条件での紫外線照射+放電実験を繰り返し、その再現性を確認するとともに、生成メカニズムの検証実験を進めている。また、高温高圧熱水実験装置を用いた模擬原始海水中でのアンモニア態窒素や含窒素有機物生成実験の結果からも、NOxの還元によるアンモニア態窒素の生成のみならず分子状窒素からのアンモニア態窒素の生成が観察されるという興味深い結果を得た。このデータも極めて新規性の高い結果であるため、現在多様な条件での紫外線照射+放電実験を繰り返し、その再現性を確認するとともに、生成メカニズムの検証実験を進めている。 さらに平成29年度の固体ー液体間衝突実験の結果から、隕石中の有機物は海水中での微粒子化と分散が衝突時に活性化することが示唆された。固体ー液体間衝突現象の物理的挙動による隕石有機物の活性化は、これまでに報告例がないため、現在その固体ー液体間衝突現象の物理的挙動について研究論文を準備している。平成30年度以降にそのメカニズムの検証実験を進める。
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