研究課題/領域番号 |
17H01177
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 善章 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80182765)
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研究分担者 |
西浦 正樹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60360616)
釼持 尚輝 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (80781319)
齋藤 晴彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60415164)
渡邉 智彦 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30260053)
沼田 龍介 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (30615787)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ物理 / 非線形科学 / 宇宙・天体プラズマ / 自己組織化 / 渦 / 磁気圏 / オーロラ / ホイッスラー |
研究実績の概要 |
RT-1実験装置は宇宙プラズマに匹敵する(相似則をみたす)磁気圏型プラズマを生成できる.これを用いた実験を中核として,プラズマ中の運動・揺らぎの大規模な動態をホリスティックに可視化する研究を行った.コヒーレンス・イメージング分光,ポッケルス電界計測システムを独自に開発し,プラズマ全体の非接触計測や高周波電場の直接計測によって,これまで詳細が知られていない磁気圏内部の運動・揺動を高精度で明らかにした. RT-1によるこれまでの研究で,磁気圏型プラズマの自己組織化は磁化した粒子に対するトポロジー束縛(磁気モーメントの断熱不変性に起因する)によって説明できることが示されている.電子系とイオン系は電場を仲介した渦運動(E×Bドリフトで近似できる)によって平衡する.しかし,厳密にはE×Bドリフトは非ホロノミーであり,磁場に平行な運動と結合する.その結果,極近傍に電場が生成することが理論的に予測されている.実験では,コヒーレンスイメージングにより磁気圏全体のプラズマ回転流速を計測し,電場と回転速度との関係を理論的予測と比較検討した. 自励的な揺動だけでなく,電離層およびプラズマシートからの擾乱を模擬するために,プラズマへのガス入射を行い,それによって引き起こされるプラズマの構造変化,それを駆動する揺らぎの計測を行った. 理論解析では,磁化したプラズマ粒子の非ホロノミー束縛の幾何学的効果の解析,ジャイロ運動論シミュレーションによるプラズマの揺動励起メカニズムの解明で成果を上げた.また,プラズマを構成する多種の荷電粒子(電子およびバルクイオン,不純物イオン)の温度およびに密度の空間分布計測の結果を,素過程に内向き拡散効果を加味した非線形発展方程式の解と整合させ,非平衡・開放系としての磁気圏システムの粒子・エネルギー循環の構造を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラズマ中を構成する多成分粒子の温度と密度のバランスは強い非線形性をもつ発展方程式で支配されている.RT-1実験装置に装備された多数の計測器から得られるパラメタ群の全てを self-consistent に説明することは容易ではないが,理論的に予測している内向き拡散の効果を加味することで,実験データを再現できたことは,非平衡・開放系である磁気圏プラズマのサステナビリティ―を解明する重要な成果だといえる. 理論研究では,Lie-Poisson代数の変形理論を定式化し,カイラリティーをもつ場の理論をシステマティックに導く理論を得た.これはプラズマ物理に限らず,幅広い応用の可能性をもつ成果である.
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今後の研究の推進方策 |
磁気圏プラズマの様々なパラメタを比較し,さらに磁気圏に対してプラズマを入射することによって能動的に擾乱を与えることで,プラズマ中で自発的に発生する揺動の時空間構造を計測して磁気圏プラズマの構造形成・維持のメカニズムにせまる.そのために,プラズマ入射装置を開発する.これまで独自に開発したコヒーレンスイメージングシステムのデータから,プラズマの内部構造を再構築する.そのためには,実験装置壁面からの反射光の効果を分離するなど,高度なデータ解析が必要となる.従来のアーベル変換などの方法では不可能なデータ解析に機械学習の方法を応用して再構築を試みる.
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