環状アルミニウム化合物から、求核的なアルミニウムアニオンの合成を行い、X線結晶構造解析によりこれまでに存在しないAl-K単結合を有すること、還元前後におけるAl原子周りの構造の変化はAl原子上に存在する非共有電子対の安定化によるものであること、Al原子上の非共有電子対がHOMOに・空軌道がLUMO+8に相当すること、Al原子上に求核性があること、Alアニオンとしてベンゼンのプロトンが脱離可能であること、C6F6に対して芳香族求核置換反応を起こすこと、を明らかとした。合わせて、この化合物が(1+2)または(1+4)型の付加環化反応を起こすこと、トランスメタル化により新規なAl-Y結合を有する化合物を与えること、Ti(IV)錯体との反応では1電子還元剤として作用すること、も見いだしている。一方、新規ボリルアニオンの合成検討・ボリルアニオンを用いた典型元素多重結合化合物の合成を行った。さらに、新規な高反応性のジボラン(4)として(o-tol)2B-B(o-tol)2を合成、これが水素分子のH-H結合・一酸化炭素のCO三重結合・N=N二重結合を切断可能であること、これの還元により得られるB=B二重結合性を持つジアニオンがジアリールボリルアニオン等価体として作用すること、これがアルデヒドの定量的な二量化反応を起こすこと、を実験的に明らかにした。これらの反応はDFT計算により反応機構解析も合わせて行っている。特に3種の結合切断が進行する際の遷移状態では、一つのホウ素がルイス酸として作用し、もう一方のホウ素がB-B結合電子を使ってルイス塩基として作用するという点は、ジボラン(4)化学種の反応性に対して新しい知見を与えるものである。
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