研究課題/領域番号 |
17H01193
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 陽介 広島大学, 理学研究科, 教授 (50158317)
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研究分担者 |
井上 豪 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20263204)
SHANG RONG 広島大学, 理学研究科, 助教 (70754216)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超原子価 / ラジカル / ポリマー / カルベン / ホウ素 |
研究実績の概要 |
昨年度の実績の概要 ・これまでの我々の超原子価5配位窒素化合物の合成と構造の研究から派生して、フェノール基やカルボキシル基を有する水溶性の超原子価5配位窒素誘導体の合成に成功した。X線構造解析にも成功した。水にかなりの溶解度を持ち、中性の水であれば数日間水溶液で存在するという安定性を有することがわかったが、アルカリ性では分解してしまうこともわかった。 ・我々が、TMPBCl2のNa還元反応により(TMP:2,2,6,6-tetramethylpiperidine))、ごく最近単離した低配位ホウ素化合物三量体(TMPB)3は、X線解析の結果、非常に長いホウ素-ホウ素距離を持つためホウ素にラジカル性があると考えていたが、大阪大中野雅由教授との共同研究(理論化学研究)により、ラジカル性はあまりないことがわかった。しかし、(TMPB)3は非常に新規性の高い化合物であり、この構造と電子状態について詳細な解析を行った。その結果についての論文を投稿し、インパクトファクターの高い雑誌であるAngew.Chem.に掲載された。審査委員の評価は極めて高く、VIP論文となり、frontispieceとなった。さらにイソシアニドや一酸化炭素などと(TMPB)3の反応についても検討を続けており、興味深い結果が得られつつある。 ・そのほか、T字型硫黄やリン・ケイ素化合物合成にも成功し、アンモニアなど小分子との反応性の研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標のうち、まだ、二光子吸収化合物の論文を投稿していないが、水溶性の超原子価5配位窒素化合物は合成した。アルカリ性であまり安定でないこともわかって来たので、生体イメージング研究は行えていない。 世界初の三重項カルベン研究はようやく前駆体を純粋に合成することができた。これから酸化研究を行う予定である。 上記の低配位ホウ素化合物三量体(TMPB)3の単離と電子状態解析の研究は、非常に新規性が高く、Angew.Chem.のVIP論文となった。これは予想よりも大きな進展となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記の研究をさらに発展させつつ、以下の新たな研究を実施する。 特に、新規一重項ラジカル系の合成と二光子吸収特性について、連携研究者の中野教授は、異なる原子間での中間ジラジカル性化合物は、非線形光学特性がされに増強されるという理論予測を発表している(中野・鎌田・山本で共著論文を発表:DOI: 10.1002/cphc.201601226)。我々は、世界で初めて単離とX線構造解析に成功した超原子価硫黄ラジカルを報告しているので、その二量体による新たな中間ジラジカル性化合物の合成を目指す。
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