研究実績の概要 |
平成29年度は「梯子構造を有する多彩な配位高分子群の設計・構築と物性探索」に焦点を当て研究を進めた。強い電子-格子相互作用や電子相関及び比較的大きな電子移動積分が導入可能な混合原子価金属錯体を基本骨格として、梯子構造を有する多彩な配位高分子群の設計・構築を行った。一次元電子系と二次元電子系の狭間に位置する梯子系は、鎖の本数や偶数・奇数鎖に強く依存した物性が発現されることが知られている。奇数鎖においてはギャップレスの磁性を示し、偶数鎖ではスピンギャップを示すことが知られている。 また、偶数本鎖ではキャリア注入で超伝導が発現することが予言されている。梯子系の研究例はこれまで少数の金属酸化物に限られ、しかもその本数鎖は3つが限界であった。最近我々は、[(PtBrdien)2bpy]Br4において、特異な逆位相電荷密度波(CDW:Charge-Density-Wave)状態を発見した。また、阿弥陀くじ梯子型ナノシートの合成にも成功した。このナノシートは、無限系としては極めて珍しいNi(II)-Ni(III)の混合原子価を示し、特異な磁性を示すことがわかりつつある。本研究主眼では、速度論的合成手法と熱力学的合成手法を駆使することによって、Ni, Pd, Ptイオンを基盤として、3本鎖、4本鎖、5本鎖、無限鎖数の梯子系の構築に挑戦した。また、チューブ状の多孔性金属錯体の合成も幾つか行った。その結果、目的の構造体のパーツの合成に多数成功した。 次年度は、これらパーツを用いて、主眼の最終目的構造体の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は「Modular Cavities: Induced Fit of Polar and Apolar Guests into Halogen-based Receptors」という題目で、Inorganic Chemistryに投稿した。要旨は、Neutral triangular macrocyclic compounds, [PdX2(4,7-phen)]3-(DMF)3-Et2O (X = Cl, Br; 4,7-phen = 4,7-phenanthroline, DMF = N,N’-dimethylformamide, Et2O = diethylether) were synthesized and their molecular structures were characterized. Solution-state 1H NMR results suggested formation of macrocyclic unit, and single-crystal X-ray crystallography revealed clear triangular structure. A detailed examination of the structures indicated formation of two kinds of cavities in solid state, where triangular unit works as a halogen-based receptor for polar and apolar solvents through weak hydrogen bonding and dipole-dipole interaction.である。
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