研究課題
平成30年度は、MX-tube錯体を用いて疎水性ナノ細孔の精密なデザインを行い、疎水性ナノ細孔内での物性発現を狙った研究を進めてきた。特に、電子アクセプター分子を架橋配位子に用いてMX-tube錯体を合成し、電子ドナー分子を包接させて金属的な電気伝導性の発現を狙った。さらに、疎水性ナノ細孔の形状制御を狙って、環状三角形錯体をテンプレートとした三角柱状の形状を有するMX-tube錯体の合成を行った。新規の環状パラジウム三角形錯体の合成に成功し、種々のゲスト分子との共結晶化、およびその相互作用について明らかにした。また、電子アクセプター分子を配位子として用いた新規環状白金四角形錯体の合成に成功し、その還元活性について明らかにした。さらに、これらの環状錯体をテンプレートとして MX-tube 錯体の合成を進めた。現在のところ、環状四角形錯体を酸化的高分子化することで、高い結晶性を有する生成物を得ている。Raman スペクトルからは MX 構造を有していることが示唆され、この生成物が MX-tube 錯体であることが示唆されている。環状三角形錯体についても同様にして MX-tube 錯体の合成を試みているが、成功には至っていない。サイクリックボルタンメトリーの結果からはBr体についてはパラジウムの酸化に由来する酸化波が観測されており、MX-tube 錯体の合成を行うことができると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
環状三角形錯体はX-Pd-X部位が三角形ユニットから垂直に位置しており、酸化的高分子化を行う上で三角形ユニットの積層を阻害していると考えられる。現在、電子アクセプター性のMX-tube錯体の単結晶を合成し、ゲスト分子の包接に由来した電気伝導性について検討している。また、極低温や高圧力などの極限環境下におけるMX-tube錯体の物性についても検討している。環状三角形錯体については、まずは酸化的高分子化を達成できるような条件や構造設計を行っている。具体的には、先述した対アニオン交換を行うことによる三角形ユニット間の立体障壁を緩和や、X-Pd-X部位が三角形ユニットと平行に位置するような環状三角形錯体の合成を行進めている。4,7-phenと同様の配位を持つ3,3-bipyridineはこの解決策の一つであると考えられる。酸化的子分子化を行って三角柱状の形状を有するMX-tube錯体の合成が達成されれば、疎水性ナノ細孔内における水のクラスター構造の観測、プロトン伝導性の測定からプロトンの伝達挙動を観測する予定である。
順調に計画が進んでいるので、予定通り次年度は次の段階でもある「一方向プロトン輸送を可能とするナノ薄膜の作製」に焦点を当てて研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)
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