研究実績の概要 |
多孔性配位高分子(MOF)は高い設計性を持つため次世代の材料として注目を集めている。一般的に絶縁体であるMOF自体が電気伝導性を持てば電極触媒として高効率な燃料電池への応用が考えられる。本研究では金属伝導性を示す一次元ハロゲン架橋複核金属錯体(MMX-chain)に着目しMMX-chainの配位子部分に別の金属との配位サイトを付与し金属イオンを介してMMX-chain同士を連結することで骨格が電気伝導性を示す三次元構造体(MMX-MOF)の合成を目指し、MMX-chainの構成ユニットである白金二価および三価複核錯体の合成を試みた。trans-PtCl2(NCPh)2、ヨウ素、Hcdtb (=4-Cyanodithiobenzoic acid)から溶媒熱合成法により白金三価複核錯体Pt2(cdtb)4I2(錯体1)を、錯体1を電解還元して白金二価複核錯体Pt2(cdtb)4(錯体2)を合成した。試行の結果錯体1、2の単結晶合成に成功し単結晶X線構造解析によりパドルホイール型の明瞭な複核構造を持つことを確認した。錯体2のPt-Pt間距離は2.757(1)Åで錯体1における距離(2.582(1)Å)よりも伸長していた。これは白金複核ユニットのdσ*に電子が存在しPt-Pt間の結合性が失われたためと考えられる。またRamanスペクトル測定から複核構造に特徴的な振動モード(錯体1: v(Pt-Pt)111cm-1,v(Pt-I)217cm-1;錯体2: v(Pt-Pt)135cm-1)が観測された。さらにUV-visスペクトル測定と理論計算(密度汎関数法)との比較から電子遷移の帰属を行った結果、錯体1はヨウ素のpz軌道から白金複核ユニットのdσ*軌道への遷移に対応するHOMO-LUMO間の吸収バンド(2 eV付近: dσ*←σ(I))が観測された。現在これら錯体と金属イオンの自己集合によるMOFとしての集積化を試みている。
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