研究課題/領域番号 |
17H01200
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
速水 真也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30321912)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノシート / 酸化グラフェン / 磁性 / 伝導性 / 誘電性 |
研究実績の概要 |
本研究では、酸化グラフェン(GO)やその還元体(rGO)、金属酸化物(MO)、金属水酸化物(MOH)あるいは金属(M)ナノシートといった二次元材料を基盤とし、異種物質とのハイブリッド化により形成する“極性場”に着目した機能発現を目指した。基盤となるナノシート上に、異なるナノシートあるいは種々のナノ粒子や分子などの異種物質を化学的にハイブリッド化することで、界面に特異なダイポール(極性)が発現する。これを“極性場”と定義し、極性場に基づく機能開発を行うことで、ナノシートの特徴を最大限に活かしつつ、ハイブリッド極性場における単一ナノシートでは実現不可能な機能発現を目指した。 これまでに酸化グラフェン(GO)とその還元体である(rGO)ナノシートにおける機能探索およびハイブリッド化による多機能化を目指すことを目的とした。GOナノシートは高いプロトン伝導性を示すことを世界に先駆けて見出すことに成功し、固体電解質としての可能性を示唆することができた。またGOを種々に還元したrGOは、p型半導体あるいはn型半導体の制御に成功し、オールカーボンでのpn接合に成功した。またrGOの光触媒による水の分解なども観測することに成功した。さらにGOの酸素官能基に着目し、GOハイブリッドおよびrGOハイブリッドの合成および多機能性発現(磁性と伝導性、プロトン伝導と電子伝導性、電極触媒)に成功した。さらにGOおよびrGOさらにはそれらのハイブリッドを用いた、燃料電池、スーパーキャパシタのデバイス開発まで行うことができた。 さらにGOに種々の元素を導入し、ダイヤモンドに相転移させることで、磁性、誘電性さらには超伝導の発現にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、酸化グラフェン(GO)、金属酸化物(MO)、金属水酸化物(MOH)あるいはそれらの還元体である酸化グラフェン還元体(rGO)および金属(M)ナノシート、さらにそれらナノシートを組み合わせたハイブリッドやナノシートと種々のナノ粒子や分子などのハイブリッドにおける極性場に基づいたデバイス・触媒の機能創発を行ってきたが、それらの機能性開拓には成功してきた。 例えば、rGOは伝導性や強磁性を示すため、金属イオンや金属錯体との協奏的多重機能性を発現させた。またrGO-フタロシアニンのハイブリッドでは、ORRの触媒能を見出した。またp型n型rGOハイブリッドではダイオード特性の発現にも成功した。さらにGO-金属錯体ナノ粒子におけるハイブリッドにおいて、GOを用いたナノコンプレッサーの開発に成功し、GO/TiO2ハイブリッドにおいては非常に大きな比誘電率の観測に成功した。GO/NiOハイブリッドではバイオマスの触媒反応においてセルロースからグルコースさらにHMF (5-(hydroxymethyl) furfural)までを高収率、高選択性で得ることに成功した。 ごく最近、それらのGOハイブリッドを相転移させ、さらにさまざまな物性発現(磁性、誘電性、超伝導)に成功し、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、科学技術におけるイノベーション創出をもたらす原子の自在配列や次元制御などは世界中で注目されている中で、イノベーションをもたらす材料として極めて大きな可能性を有している有用なナノ炭素材料として、GOナノシートに着目している。GOナノシートに高効率で高濃度窒素ドープできることを見出し、ドープダイヤモンドの原料とすることで、従来まで難しかった窒素や酸素などの原子をドープしたダイヤモンドを合成し、プレリミナリーな結果でも示したように高温超伝導体や強磁性体を得ることができる。 上述した手法を用いれば、高濃度に窒素や酸素ドープされたダイヤモンドの合成が可能となる。理論的には窒素や酸素ドープダイヤモンドが高温超伝導体になることが予測されており、本研究では、高濃度に窒素や酸素ドープされたダイヤモンドの高温超伝導の発現を期待する。本研究提案において、GOナノシートのドープによる高温超伝導など機能性ダイヤモンドの研究開発は、社会に大きなインパクトを与え、研究目標に掲げた研究成果で大きなブレークスルーを起こすと考えられる。
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