今年度は、前年度までに進めてきたメカノクロモフォアライブラリーの構築と評価(ステージ1)において新たに開発したメカノクロモフォアをさらに拡張して、高分子化およびそのメカノクロミック特性評価を基礎的かつ学術的な視点を重視して検討した。特に、ジアリールビベンゾフラノン(DABBF)、ジアリールスクシノニトリル(DASN)骨格を利用して、ハイブリッド型のメカノクロモフォアを開発し、新たな様々なメカノクロミック高分子の合成と評価(ステージ2)にも成功した。さらに、樹状高分子であるデンドリマー、非共有結合による会合を利用した超分子ポリマー、などを合成し、高分子のサイズや相互作用がメカノクロミズムに及ぼす影響を系統的に明らかにすることができた。 また、メカノクロミック高分子のマルチカラー化(ステージ3)に関しては、前年度までにいくつかのメカノクロミックポリマーの開発に成功しているが、今年度は、メカノクロモフォアに連結する高分子の分子量を変えることで、逐次的に色彩が変化するメカノクロミック高分子の実現に成功した。これまでの知見をもとに、さまざまなタイプのマルチカラーメカノクロミックポリマーに関する知見を得ることができた。 今年度は最終年度であることから、得られた研究成果を体系化し、学術的な価値を積極的に発信した。新型コロナウィルスによる影響で学会(特に国際学会)の延期や中止が相次いだため、特に論文発表を重視した。 一連の研究は、研究協力者として青木大輔氏が参画することで効率的に進めることができ、研究成果は当初計画よりも遥かに多くなった。研究の過程で新たに見いだされた現象の解明など、今後の更なる学術発展に貢献できる結果が数多く得られた。
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