研究課題
凍結により生じる液相空間の性質を制御することにより凍結現象を新たな機能開拓に利用すると共に、現象の本質を理解することを目的としている。今年度は以下の検討を行った。(1)凍結溶液での分子の集合体形成、(2)氷結晶に取り込まれたイオンの局所構造、(3)凍結溶液の局所pHとpH緩衝能、(4)凍結による鉄酸化物の溶出挙動、(5)凍結水溶液中での鉄水酸化物への遷移金属イオンの吸着、(6)ラマン分光の凍結による高感度化。(1)では6-シアノフェノールをプローブとして、その濃度と凍結空間の大きさによる蛍光挙動を詳細に検討した。その結果、凍結により溶解度が大幅に上昇すること、それに伴い氷に制限されていない状態では見られない集合体が形成すること、制限空間が小さいほどこの傾向が著しいことなどを明らかにした。(2)では氷結晶格子に取り込まれたイオンの局所構造をX線吸収微細構造とDFT計算により決定した。その結果、カリウムイオン、塩化物イオンはいずれも一分子欠損空間に存在することを明らかにした。(3)では氷界面においてマイクロメータースケールでpHがわずかに高くなること、氷結晶により強く制限されるほどその傾向が大きいことを明らかにした。また、凍結水溶液は中性付近でpH緩衝能を持つことを見出し、緩衝能を定量的に評価した。(4)では凍結により酸化鉄中の三価鉄の還元溶解が抑制されるのに対し、二価鉄の溶出が促進されることを電気化学的に明らかにした。 (5)では鉄水酸化物が吸着材として機能することは古くから知られているが、凍結系での挙動は未知であった。蛍光X線分光により凍った状態で吸着率の測定を可能とし、第一遷移金属イオンについて評価を行った。(6)では凍結表面増強ラマンにより高感度化が可能である一方で定量性に問題があった。相互内部標準および統計手法により定量性が格段に向上可能であることを明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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