研究実績の概要 |
鶏卵から糖鎖-アスパラギンを調製し、このアスパラギンの両端にペプチドを水溶液中で連結する新規糖ペプチド合成法を検討した。この反応では、native chemical ligation (NCL)というペプチドを連結するための補助基としてSeitzらが報告したチオール基を持つN-ベンジル系化合物をヒト型糖鎖に導入した。そして、糖鎖アスパラギンのN末端側、C末端側にこの補助基を導入することで、ペプチドが実用的に連結できることができた。この方法を用いて、現在、糖鎖末端がdi-GlcANcになった2分枝複合型糖鎖をもつエリスロポエチン(EPO)等の合成をおこなっている。 糖鎖末端が、di-GlcANcのN型糖鎖をもつ小型糖タンパク質CCL-1の合成をおこない、超遠心で単離したゴルジ装置の破砕溶液に加え、どのような糖鎖付加が進行するか考察した。その結果、疎水性の高い糖鎖アスパラギン誘導体や糖タンパク質CCL-1に、N型糖鎖を3分枝にするGlcNAcが導入されることが確認できた。また、同様にエリスロポエチンの126番目にO-GalNAcが導入される際、どのようなアミノ酸配列が認識されているかその周辺のペプチドを様々合成し、ゴルジ画分に入れLCMSを用いて追跡した。その結果、126, 127, 128, 129位周辺の配列、特にプロリンの存在が必要であることがわかった。 ほ乳類の細胞にAlexa-Fluor標識されたコレラ毒素B(市販品)を加え、ゴルジ体、小胞体、そしてゴルジ体へ移動できるかその条件検討をおこなった。その結果、蛍光顕微鏡で追跡する限りAlexa-Fluor-コレラ毒素Bはゴルジ体、小胞体へ移動していることが確認できた。今後、di-GlcANc-N型糖鎖が結合したAlexa-Fluor-コレラ毒素Bをゴルジ体に導入し、その糖鎖構造変化がどのようになるか追跡する予定である。
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