研究課題/領域番号 |
17H01217
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
工藤 昭彦 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (60221222)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒素固定 / アンモニア分解 / 人工光合成 / 光触媒 / 光電極 |
研究実績の概要 |
アンモニア水溶液の分解に関しては,可視光照射下においてに活性を示すRhドープSrTiO3の高性能化および,可視光応答性CdS光触媒を用いた助触媒効果について研究を行った.RhドープSrTiO3光触媒のさらなる高性能化のために,固相法,水熱法,および錯体重合法により調製した前駆体を用いたフラックス法による合成を試みた.その結果,錯体重合法により調製した前駆体を塩化セシウムフラックス処理することにより調製した試料で高活性を示すことを見いだした.その活性は従来の固相法で合成した試料の2倍に向上した.また,新たな光触媒探索として,可視光応答性CdS金属硫化物光触媒によるアンモニア水溶液の分解を行った.RuおよびPd助触媒を担持することで,可視光照射下においてアンモニア水溶液の分解に活性を示した.水素と窒素を3:1の化学量論比で継続的に生成し,暗時において気体が生成しなかったことから,水素および窒素の生成が光触媒的なアンモニア水溶液の分解によるものと確認できた.またこれら助触媒が実際にアンモニアの酸化に効果があるかどうかを調べるために光電気化学測定を行った.アンモニア水溶液の分解に活性を示したPd, Ru助触媒を担持したCdS光触媒電極では,アンモニア水溶液中において,アンモニアを加えていない水溶液中で測定したときよりもアノード光電流が増大した.このことから,これら助触媒がアンモニア酸化の活性点として働くことが示唆された.このようにPdまたはRu助触媒を担持したCdS光触媒が,可視光照射下においてアンモニア水溶液の分解に活性を示すことを初めて見いだした. 窒素分子の還元反応に関しては,伝導帯のポテンシャルが高く還元力の大きい水分解Ta系複合酸化物を中心にRu助触媒を担持した粉末光触媒を用いて検討したが,現時点では活性が得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視光応答性光触媒を用いたアンモニア水溶液の分解において,RhドープSrTiO3光触媒の高活性化や新たなPd, Ru助触媒担持CdS光触媒の開発を達成することができ,進展が見られた.しかし,最難関反応である窒素分子の還元反応に関しては未達である.
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今後の研究の推進方策 |
アンモニア水溶液の分解反応に関しては,さらなる新規光触媒の開発を行う.また,助触媒担持条件などを検討し,高活性化を図る.さらに,電気化学測定を含め反応機構に関する知見を得る.窒素分子の還元反応に関しては,まずは適当な犠牲試薬を用いた反応で,還元反応活性を評価する.また,気相光触媒反応に着手する.
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備考 |
A. Iwase, K. Ii, and A. Kudo, Chem. Commun., 2018, 54, 6117がCover Pictureとして選定された。 学生ポスター賞受賞2件 第8回CSJ化学フェスタ/第37回光がかかわる触媒化学シンポジウム
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