研究実績の概要 |
これまでに,CdS光触媒にRu助触媒を担持することにより,可視光照射下でのアンモニア水溶液の分解反応が進行することを初めて見いだした。しかし,アンモニアの酸化サイトとして働くと考えられるRu助触媒の状態は明らかではなかった。そこで,高エネ研との共同研究によりRu助触媒のX線吸収端スペクトルを測定したところ,RuS2の状態になっていることが明らかとなった。これにより,RuS2が金属硫化物光触媒を用いたときのアンモニアの酸化に効果的な助触媒であることが明らかとなった。 アンモニア水溶液の分解に対して可視光で働く化学的に安定な金属酸化物光触媒の開発も行った。その結果,Ir単独ドーピング,またはIrとSr,Ba,Laを共ドーピングしたペロブスカイト構造を有するAMO3 (A = Na, K; M = Nb, Ta)光触媒を活性を示すことを見いだした。Ir単独ドーピング体ではKTaO3:Ir,共ドーピング体ではNaTaO3:Ir(1%),La(4%)がもっとも高い活性を示した。X線回折の測定により,これらのドーパントが結晶格子内に置換されていることが確認された。また,拡散反射スペクトル測定から,これらのドーパントが形成するバンドギャップ内の電子ドナーレベル(不純物準位)からホストであるペロブスカイト酸化物の伝導帯への光電子励起により,可視光照射下で反応することが確認できた。 窒素分子の還元反応に関しては,伝導帯のポテンシャルが高く還元力の大きい水分解Ta系複合酸化物を中心にRu助触媒を担持した粉末光触媒を用いて検討した。その結果,若干のアンモニアが検出されたが,今後コントロール実験や高活性化を行い,真の光触媒反応であるかを検証する必要がある。
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