研究実績の概要 |
昨年度では,IrドーピングSrTiO3(SrTiO3:Ir)光触媒の合成法として従来の固相法から錯体重合法に変えることで,可視光照射下におけるアンモニア水溶液の分解の高活性化に成功した。本年度では,更なる光触媒材料の拡張のため,われわれのグループが独自に開発した高い可視光水分解活性を示す微量ドーピング型光触媒のSrTiO3:Rh(0.02%),Sb(0.04%),Al, SrTiO3:Ru(0.03%),Sb(0.06%),Alを用いたアンモニア水溶液の分解を行った。その結果,いずれの光触媒も可視光照射下(λ>440 nm)において活性を示した。さらに,これらの光触媒に対してドーピング量を増やした試料(SrTiO3:Rh(0.5%),Sb(1%),Al, SrTiO3:Ru(0.3%))の活性を調べたところ,上記の微量ドーピング型光触媒と比較して高い活性を示すことがわかった。これは,ドーピング量の増加によってドーパントの不純物準位による可視光吸光係数が増大したためだと考えられる。これらのことから,本反応においてはドーピング量を増やした光触媒が高い活性を示すことが明らかになった。また,可視光水分解に活性なNaTaO3:Ru(0.1%),La(2%)光触媒が可視光照射下(λ>420 nm)におけるアンモニア水溶液の分解反応にも活性を示すことを見いだした。これらの結果は,Ruをドーピングした光触媒が本反応において活性を示した初めて例である。さらに可視光応答性光触媒であるSrTiO3:Crも活性を示すことを見いだした。このように,本研究によってアンモニア水溶液の分解に活性を示す光触媒ライブラリーの拡張に成功した。これらの成果は,水素キャリアであるアンモニア分解による水素の取り出し反応に使えることができると期待される。
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