研究課題/領域番号 |
17H01221
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高原 淳 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (20163305)
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研究分担者 |
高田 晃彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (20254427)
檜垣 勇次 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40619649)
平井 智康 九州大学, 工学研究院, その他(移行) (60585917)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イモゴライト / ハロイサイト / ナノセルロース / セルロースナノ結晶 / 有機無機ハイブリッド材料 / 交互積層膜 / 表面物性 / ハイドロゲル |
研究実績の概要 |
天然アルミノケイ酸塩ナノチューブであるイモゴライトは内表面にSi-OH 、外表面にAl-OH基、ハロイサイトは外表面にSi-O-Si、内孔壁にAl-OH基を有する。申請者らはAl-OH を有する表面あるいは内壁の選択的化学修飾がリン酸基で可能であることを見いだし、種々の有機無機ハイブリッド材料に展開した。リン酸基とイモゴライト表面の官能基との特異的分子間相互作用に着目し、リン酸修飾セルロースナノクリスタル(P-CNC)とイモゴライトとの多層積層構造により新規ナノハイブリッドを調製した。交互積層はスピンアシステッドLBL法を用いた。赤外吸収スペクトルなどの手法で交互積層が進行することを確認した。交互積層により得られた膜は防曇性を示した。またイモゴライトの表面親水基とセルロースナノファイバーとの相互作用に着目したハイブリッド膜を調製した。イモゴライトの表面親水基とセルロースナノファイバーの表面親水性により両成分が比較的良好に分散したハイブリッド材料が得られた。調製した薄膜は極めて優れた力学物性を示した。 また様々な基板に表面付着性を有する生体由来のカテコール基含有モノマーとフルオロアクリレートからなる新規撥水性高分子とハロイサイトのハイブリッド化で撥水撥油表面被覆材を設計した。得られた被覆表面は優れた撥水性、撥油性を示した。また水のスプレーに対しても安定で基質付着性も良好であった。 表面修飾ハロイサイトと化学修飾ヒアルロン酸を利用したハイブリッドハイドロゲルを調製し膨潤特性と力学物性を評価した。得られたハイブリッドハイドロゲルは優れた水に対する膨潤特性を示しかつ強化材としてのハロイサイトにより優れた力学的特性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最初の提案ではボロン酸を利用した修飾反応とポリマーのハイブリッド化を検討したが、ボロン酸とイモゴライトの反応性が予想以上に低かったので、ポリマーへの導入官能基をリン酸基に変更する研究方針とした。この方針に基づきH29年度後半よりリン酸修飾セルロースナノクリスタルとイモゴライトとの多層積層により新規ナノハイブリッドを調製した。基板上の積層薄膜は高い親水性を示し、防曇性を示した。現在、自己支持性のある薄膜の開発を目指している。またイモゴライトの表面親水基とセルロースナノファイバーの表面親水性により両成分が比較的良好に分散したハイブリッド材料が得られた。調製した薄膜は極めて優れた力学物性を示したがタフネスを向上させる必要がある。
一方、イガイなどの接着分子であるカテコール基含有モノマーとフルオロアクリレートからなる新規撥水性高分子の合成に成功した。この新規高分子の開発によりハロイサイトとの複合化を行うことにより親水性と撥油性を示すハイブリッド薄膜の調製が加速した。
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今後の研究の推進方策 |
①ナノセルロースの基本物性の確認:セルロースナノファイバー(CNF)あるいはセルロースナノ結晶(CNC)にリン酸基を導入し分散溶液のレオロジー特性を評価する。 ②製膜法の確立:CNF、CNC、あるいはリン酸基修飾CNC(P-CNC)とHNTあるいはIMNTの水系分散溶液をバーコーターで製膜し、有機無機ハイブリッド膜を調製し、ハイブリッド薄膜のを粘弾性特性、X線回折測定、熱重量分析を行う。 ③力学物性評価:実用条件に近い条件での物性評価を行うためにハイブリッド膜の二軸変形、さらにはバルジ試験によりハイブリッド膜の力学物性を評価する。併せて凝集構造を放射光X線散乱により解析する。またこのデータを材料設計にフィードバックする。 ④スプレーコート積層法の確立:スプレーコート法を利用して、CNC、イモゴライトの多層積層膜を調製し、その分子鎖凝集構造を放射光X線回折により評価する。 ⑤ハイブリッド薄膜の高性能化:薄膜のタフネスを増すためのマトリクス高分子を設計し、合成する。
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