研究課題/領域番号 |
17H01224
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
古川 英光 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50282827)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機械学習 / ゲル / 3Dプリンター / 3Dスキャナー / 高分子構造・物性 / 機械材料・材料力学 |
研究実績の概要 |
申請者は平成25-27年度の基盤研究(B)「高強度・形状記憶ソフト&ウェット材料の超高精度自由造形法の確立」において、3Dゲルプリンティング技術の確立とその応用可能性を示すことに成功し、その成果は3Dゲルプリンターの実用化や大学発ベンチャーの設立に至っている。本研究は、デジタル制御で高機能性3Dゲル材料の合成と構造物性解析の両方ができるシステムを試作し、機械学習によって造形する材料の成分や反応条件の最適化や新規機能性材料を自律的に探索するゲル材料研究ロボットの開発を目的とする。従来のコンビナトリアル・ケミストリーのアプローチを刷新し、デジタル活用でゲル研究の超加速化の可能性を探り、最終的には深層学習と材料研究の広範な融合を目指す。3Dプリンター分野での日本の遅れを挽回し一気に先頭に踊り出ることを目指す。平成29年度は下記を実施した。 【テーマ1.診ながら合成するゲルロボ1号の開発】 (1)ゲル化溶液の混合装置の開発…多様なゲルを合成するために異なる成分を水溶液として予め準備したものを任意の比率で混ぜたプレゲル溶液を調製する装置を開発した。 (2)3Dゲルプリンターのロボット化…申請者らは世界初のバスタブ方式の3Dゲルプリンター(愛称SWIM-ER)の開発に成功していることから、その経験を活かし、さまざまな形の3Dゲルを造形する3Dゲルプリンター(これを『ゲルロボ』と名付ける)を新規に構築した。 (3)同軸光ファイバー方式の顕微光散乱装置の開発…簡易的な装置を試作し、数mm角の小さなゲル試料について走査型顕微光散乱の測定を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 自動分注ロボットシステムを用いた混合の実験として、3色の顔料が分散した水溶液を分注により混合し、カラフルなゲルの合成が可能であることを検討した。色を混ぜると予想と違う色になることがあり、作りたい色のゲルを合成するためには、混合とでき上がりの色を比較して、混合や反応の条件を最適化する必要があることがわかった。
2. ロボットの技術をゲルの3D造形に適用するその第1段階として、ブロック状のゲル材料(5mm角)をロボットハンドで積み上げる研究を行った。一片5mmの立方体のゲルを積み上げることにより、さまざまな形の3Dゲルを造形する3Dゲルプリンターを新規に構築した。
3. 同軸光ファイバー方式の顕微光散乱装置の開発については簡易的な装置を試作し、測定を行なった。その結果、ゲルの測定時に音響的な振動に伴うノイズが測定されることがわかった。これを取り除くためには音響的なノイズが入らないようにするための工夫や、データ解析の時点でノイズを数値的に取り除くような処理が必要であり、今後検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
(4)3Dゲルプリンター×3Dゲルスキャナーシステム「ゲルロボ1号」の構築 昨年度実施項目(1)ゲル化溶液の混合装置の開発、(2)3Dゲルプリンターのロボット化、(3)同軸光ファイバー方式の顕微光散乱装置の開発 を組み合わせて、実験者が作りたいゲルの組成とゲルの3D形状をデータ入力するだけで、自動的にゲルを3D合成してくれる装置を組み上げる。ゲルの溶液を混合する組成や反応の条件を最適化するために機械学習を用いることを検討する。また、顕微光散乱の測定における音響的なノイズを取り除く方法について検討する。
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