研究課題/領域番号 |
17H01229
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
内田 裕之 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20127434)
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研究分担者 |
柿沼 克良 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任教授 (60312089)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 固体高分子形水電解 / 水素製造 / 電極触媒 |
研究実績の概要 |
1. 電極触媒の合成および物性評価 合成したIrOx/連珠状M-SnO2(M=Nb, Ta, Sb)酸素発生触媒のXPSにより、Ir(IV)とIr(0)の割合を明らかにできた。また、見かけの伝導率がM=Nb<Ta<<Sbの順であることを明らかにした。水素発生触媒として、PtFe合金ナノ粒子表面に1~2原子層の安定化Ptスキンを付けたPtxAL-PtFe/Cを合成できた。 2. 触媒の電気化学活性評価と作用機構解析 2.1 チャンネルフロー電極セル法で電解液中で測定したIrOx/M-SnO2触媒の80℃での酸素発生反応(OER)活性は、触媒の伝導率の序列とは関係しなかった。他方、Nafion電解質膜を用いた単セルでは、触媒の伝導率が大きいほど性能が向上し、IrOx/Sb-SnO2触媒を用いると、従来型セルの1/10の貴金属量で1 A cm-2, 1.61 Vで電解できた。この性能は92%の電圧効率に相当し、目標を達成できた。単セルで触媒伝導率の効果が大きかったのは、約10 μmの触媒層厚さがCFDEの場合の100倍であったためで、オーム損の低減と触媒有効率向上という性能向上指針を明確にできた。 2.2 PtxAL-PtFe/Cが電解液中、単セル中ともに水素発生触媒として極めて高い質量活性を示すことを初めて明らかにできた。この触媒は、酸素ガスの混入した場合のH2O2生成を抑制し、電解質膜の劣化抑制可能なことを初めて示した。 3. 小型MEAの作製と電解特性評価 PtxAL-PtFe/Cカソードと従来の(IrO2+Pt)触媒を用いた小型MEAを調製し、単セルに組み込んで1000時間の連続運転に成功した。開発したPtxAL-PtFe/Cカソードはほとんど劣化せず、高い耐久性を実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. IrOx/Sb-SnO2触媒を用いると、従来型セルの1/10の貴金属量で1 A cm-2, 1.61 Vで電解できた。この性能は92%の電圧効率に相当し、目標を達成できた。IrOx/M-SnO2触媒の伝導率が高いほど、単セルでの酸素発生活性が向上することを初めて見出した。触媒層のオーム損の低減と触媒有効率向上という性能向上指針を明確にできた。これらの成果をOpen Access論文に発表できた。 2. PtxAL-PtFe/Cが電解液中、単セル中ともに水素発生触媒として極めて高い質量活性を示すことを初めて明らかにできた。この触媒は、酸素ガスの混入した場合のH2O2生成を抑制し、電解質膜の劣化抑制可能なことを初めて示した。高いHER活性とH2O2生成抑制はPtスキン/Pt合金で水素原子の吸着エネルギーが減少するためであることをDFT計算で明らかにできた.これらの成果をRoyal SocietyのPhys. Chem. Chem. Phys誌の速報としてOpen Access発表できた。また、特許出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1. 電極触媒の合成および物性評価 Nb, Ta, Sb等をドープした連珠状SnO2ならびにTiO2などを火炎法により合成し、物性と微細構造を明確にする。酸素発生用触媒としてIrOxをこれらの酸化物担体にコロイド法により高分散する。その後、MEA触媒層用インク作製時や作動条件での安定向上を目的に種々の条件で熱処理し、触媒粒子の結晶構造、粒径、分散状態を調べる。また、本研究で高い水素発生比活性を示すことを見出したPt-M(M=Fe, Co)合金/C触媒の研究をさらに発展させる。種々の熱処理を行ったPt-M/C触媒ならびに、耐久性を向上させるための数原子層のPtスキン層を制御析出した安定化Ptスキン-Pt-M/C触媒を合成する。結晶構造、結晶子径、組成と粒径分布を評価する。 2. 触媒の電気化学的活性評価と作用機構解析 2.1 強酸性環境での電極触媒のHER固有活性を評価するため、0.1 M HClO4電解液中で水素発生活性を評価する。触媒への水素吸着エネルギーをDFT計算し、活性向上機構を検討する。また、起動停止を模擬した電位変動試験により耐久性を調べる。 2.2 種々の触媒で水素発生反応中のO2混入によるH2O2生成速度を測定する。そして水素発生活性が高く、H2O2生成率が低い触媒を見出し、その作用機構をDFT計算で解析する。 3. 小型MEAの作製と電解特性評価 高分子電解質膜として在来のナフィオン膜または炭化水素膜を用い、開発した水素発生触媒、酸素発生触媒を用いたMEAを作製する。これまでに整備した計測システムを用いて、水電解の電流-電位特性と電気化学インピーダンスを測定する。さらに、耐久性試験を行ってH2O2生成抑制の効果を実証する。
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