研究実績の概要 |
本年は、本研究の基盤であるTADFの開発、また、それらの発光材料を用いた高効率有機ELデバイスの作製をさらに進めた。また、もう一つの柱であるin silico電荷輸送解析に関し、さらなる展開を進めた。さらに、DNP-NMRの基盤構築を進めた。 新規TADF材料開発:ドナー-アクセプター間をフレキシブルなリンカーで連結することにより、分子内のみならず分子間電荷移動も利用したTADFを示す新規材料の開発に成功した(Appl. Mater. Interface, 2019, 11, 7192)。溶液プロセス材料では、カルバゾールとベンゾフェノンを用いた、TADF材料を開発した(Chem. Lett., 2018, 47, 1236)。 有機EL素子開発:これまでに我々が開発したTADF発光材料DACT-IIを用い、超高効率緑色有機EL素子の開発に成功した(Adv. Opt. Mater., 2018, 6, 201800376)。また、ホスト材料の三重項エネルギーを精密に制御することにより、ランジュバン再結合を利用したTADF有機ELデバイスの寿命を、大幅に向上させることが可能であることを明らかにした(Appl. Mater. Interface, 2019, 11, 1096)。 マルチスケール電荷輸送シミュレーション:HOMOやLUMOのみでなく、他の分子軌道の寄与も考慮することにより、任意性のある可変パラメータを一切用いることなく、正孔移動度、電子移動度ともに、実測データをこれまでより遥かに高い精度で再現することに成功した (Sci. Rep., 2018, 8, 134962)。 NMR:2017年度末、アジア圏で初めて導入された汎用DNP-NMR装置を一年を通して安定稼働することができた。また、多くの材料に対し、数倍から高いもので200倍を超える感度向上を達成することができた。
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