研究課題/領域番号 |
17H01238
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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研究分担者 |
石井 明男 (シャードンバオ) 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (80773340)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強度と延性 / 塑性変形 / 変形素過程 / 電子・原子論 / 熱活性化解析 |
研究実績の概要 |
構造物を構成する構造材料には強度と延性と靱性が高次元でバランスすることが要求されるが、強度と延性・靱性は一般的にトレードオフの関係にある。本研究の目的は、このトレードオフ関係を打ち破る指針を与える普遍的な学理を構築し、その指針に基づき実際に材料を創製し、学理を実証することにある。そのためには、様々な塑性変形の素過程の活性化条件の定量解析が不可欠である。これまでに、Mg金属中の{10-12}双晶核生成およびその成長過程を題材として、活性化自由エネルギーやその温度、応力、化学環境依存性を分子動力学法、および加速分子動力学法を用いて定量的に解析する手法を開発した。これにより、実験と直接比較できる熱力学量である、活性化体積や活性化エントロピーの非経験的な解析が可能となった。今年度は、特に活性化自由エネルギーの化学環境依存性に着目して分子動力学解法や加速分子動力学法を用いて解析を実施した。具体的には、一定の化学ポテンシャルの水素を格子間に含む銅金属中の空孔拡散の解析を実施した。その結果、水素が多数存在する場合に、空孔は予想通り熱力学的により安定に存在するようになるが、その拡散は、予想に反して早くなることが明らかになった。大正準モンテカルロ法解析や第一原理計算などを駆使してその原因を検討した結果、水素が空孔拡散の自由エネルギー地形のサドル点付近において多数吸着し、それが活性化自由エネルギーを低下させていることを発見した。この効果を表現する新しい活性化パラメータ(Activation Gibbs Excess)を提案した。これは活性化体積、活性化エントロピーに次ぐ第3の活性化パラメータである。さらに今年度は、これらの活性化パラメータを用いた動的な応力―ひずみ速度関係モデルのプロトタイプを構築し、その有効性についての検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であった動的な応力―ひずみ速度関係モデルの構築をその有効性の検討の着手について予定どおり実施できている。さらにそれに加えて、新しい活性化パラメータを世界で初めて提案することに成功しており、予定を上回る進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は今年度までに実施してきた動的な応力ひずみ関係モデルの検証を完了させ、それを基に最終的に強度と延性の両立理論として確立する。そして可能な限り多様な材料系でその有効性を示す。
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