今後の研究の推進方策 |
蓄積された実験結果より,関節液成分による潤滑効果と,運動パラメータ,軟骨組織モデルの物性パラメータ,モデル表面の化学パラメータとの相関を抽出・整理し,そのメカニズムを検証する新たな実験を実施する.特に,これまでに得られた顕著な結果である1)滑り速度,荷重に依存したタンパク質による摩擦挙動制御、2)ヒアルロン酸とリン脂質の複合による極低摩擦発現,の2点を中心に,メカニズムの解明を進める.具体的には,1)については電気化学的手法を摩擦試験に取り入れ,非定常条件下での摩擦試験における固体表面へのタンパク質の脱着挙動と変性状態を逐次評価し,得られた摩擦挙動との相関を解析することでタンパク質分子による摩擦制御のメカニズムを検証する.2)については,ヒアルロン酸とリン脂質を蛍光標識し,摩擦試験後のモデル表面に形成された吸着膜の内部構造を共焦点蛍光顕微鏡により可視化することを試みる.その上で,吸着膜の形成と構造化に果たす,運動パラメータ,軟骨モデルの力学的,化学的パラメータの役割を検証する. 培養細胞により産生されたECM成分による潤滑効果については,高強度アガロースゲルを足場材とした培養軟骨モデルの摩擦評価に新たな手法を導入する.ここでは,Hirayama[1]らの研究を参考に,レオメータにより得られたリサージュ曲線から,培養後の軟骨モデル表面の摩擦特性と,関節液成分との相互作用を検証する.またBonnevie[2]らの手法を参考に,蛍光標識したヒアルロン酸,リン脂質と,軟骨モデル表面のECM成分との相互作用を可視化することを試みる. [1] S. Hirayama, et al., Tribology International, 147 (2020) 106270. [2] E.D. Bonnevie, et al., PLOS ONE, 10(11), 2015, e0143415
|