研究課題/領域番号 |
17H01245
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村井 祐一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80273001)
|
研究分担者 |
田坂 裕司 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00419946)
PARK HYUNJIN 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00793671)
熊谷 一郎 明星大学, 理工学部, 教授 (50597680)
北川 石英 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80379065)
大石 義彦 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90617078)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 抵抗低減 / 乱流 / 境界層 / 気泡 / 気液二相流 / 気液界面流れ / 船舶 / レオロジー |
研究実績の概要 |
H30年度は,気液二相流の乱流境界層の制御における以下の3つの課題を遂行した.テーマ1[PBI] 気泡分布パターン制御による再現性・持続性の拡大:H29年度に実施された100m曳航水槽実験のデータ解析を深化させ,ボイドの自然脈動の原因を特定するためスケーリング理論を展開した.その結果,境界層厚さの10~50倍の帯域でボイド波の成長が生じることを見出した.この成果は分担者の朴らにより国際誌Experiments in Fluidsに論文として掲載された.またテイラークエット流れ場で同様なボイド率の間欠的構造の発現が抵抗低減に大きく寄与する実験結果を取得し,代表者らによる論文として国際誌 Experiments in Fluidsに掲載された.テーマ2[KBI] 慣性局所減圧型の大量微細気泡発生法の開発:翼の負圧の利用による大量気泡発生技術を10m/sまで実現できる高速水平流路で実験し,スーパーキャビティと微細なクラウド気泡発生領域の2つを跨がった流動様式線図を取得した.この結果は,分担者の熊谷らによりフルペーパー査読着きの国際会議論文AJK Fluids 2019への掲載が決定した.テーマ3[UMF] 超音波モニタリングフィードバック:超音波ドップラー流速分布計測法(UVP)を応用し,超音波パルスにより壁面と気泡の間隙に形成される液膜の高時間分解計測に成功した.この結果は分担者の朴らにより国際誌Experimental Thermal & Fluid Scienceに論文が掲載された.また,水・油の不混和液体どうしの二相流についても超音波パルスの時間差法を利用してせん断二相乱流の内部構造のモニタリングに成功した.この結果は代表者の村井らにより国際誌 International Journal of Multiphase Flowの論文として掲載された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究組織を構成する分担者がそれぞれの得意とする計測技術を発展させ,当初の見込み以上の成果を取得した.テーマ1[PBI]では,これまで5年以上の間,未解明であったボイド波による抵抗低減の促進効果の普遍的な条件が,初めて解明された.すなわち乱流境界層内で自然または人工的に生じるボイド波が,摩擦抵抗低減を大きく増幅させる物理的な理由を突き止めることができた.その結果,今後の技術展開の選択子が増えた.テーマ2[KBI] では,国立研究開発法人・海上技術安全研究所の設備を利用し,流速10m/sまでの翼型気泡発生装置の気液二相流動特性を初めて明らかにした.その知見を活用することで,さらに高性能な気泡発生装置の設計指針を決定することが出来た.また壁面の撥水性・親水性のコーティングが,境界層内の気泡に2種類の異なる運動モードを与えることが発見され,分担者の北川らにより国際誌 Experimental Thermal & Fluid Scienceに論文が掲載された.この成果は乱流境界層内の微細気泡が,運動量のみならず物質拡散や熱移動を高い感度で制御することができることを立証したものとなり,境界層のスマート制御の重要技術として世界からも多くの論文閲覧記録があった.テーマ3[UMF]では,高速流用の超音波パルスエコグラフィの独自開発が成功し,20kHzのデータサンプリングレートで乱流境界層内を移動する個々の気泡と壁面の間の摩擦特性を究明することに成功した.
|
今後の研究の推進方策 |
テーマ1[PBI] については,高い抵抗低減促進効果があることが立証されたため,海上技術安全研究所の研究者2名を本課題の分担者に加えることで,海上技術安全研究所が保有する400m曳航水槽実験での大型試験を2019年10月に実施することが決定した.この実験では長さ36mの平底モデル船舶を組立て,本課題の柱とする3つのテーマの実験を同時に展開する.テーマ1では,朴らが,気泡発生装置から24m下流までのボイド波の自然発達と,人工ボイド波の成長・減衰を調べる.テーマ2では,熊谷らが,新型の気泡発生装置の流量特性,気泡サイズ特性,気泡の壁面座標特性を計測する.テーマ3では,大石らが壁面せん断応力分布の計測,田坂らが水流の運動量境界層のボイド波による振動特性を計測する.また,北川らは,壁面性状や壁面粗さに伴う気泡分布特性の高度なデータ処理から,高レイノルズ数,高フルード数,高ウェーバー数での条件における境界層内の気泡挙動特性を解明する.
|