研究課題/領域番号 |
17H01246
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田川 義之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70700011)
|
研究分担者 |
長津 雄一郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60372538)
安藤 景太 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (30639018)
田中 あかね 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80418673)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マイクロジェット / 高粘度液体ジェット / キャビテーション / 液体急加速 / 非ニュートン流体ジェット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,衝撃力を利用したマイクロ液体ジェット生成法(代表者の開発技術)を出発点に,高機能性(粘着性,細胞培養性など)を有するマイクロジェットの吐出制御法を確立すること,さらに先駆的医工学技術の核となる高機能性マイクロジェットの利用基盤を構築することである. 本年度は,(i) 無針注射器実現のための生体組織に対する高速マイクロジェット衝突挙動の解明と制御について,臨床実験へ向けた最終段階として,ジェットの生体組織への衝突現象を調査した.生体組織の取扱いは獣医学的知識を要するため,専門家(田中)と協働した.その結果,ジェット形状や速度が貫入の深さ・貫入穴形状に与える影響を実験的に明らかにした.この成果について学会発表を行い,国際学術論文を執筆中である.また,(ii) インクジェット型3Dプリンタ開発のための高粘度材料吐出手法の確立・液滴塗布制御について,代表者らが開発した高粘度マイクロジェット吐出手法について調査を深めるとともに,ジェットの体積・塗布過程を制御するため,高粘度ジェットのピンチオフ過程についても調査を行なった.この成果について学際的国際雑誌に1報成果を報告したほか,吐出手法において特徴的な現象であるキャビテーションの生成に関する実験的研究についての学術論文1報,ナノバブルを用いた制御手法についての論文を1報発表した.さらに,(iii) プリンテッド・エレクトロニクスのための非ニュートン流体ジェット生成過程の制御について,本ジェット生成装置による非ニュートン液体の高速吐出制御法を確立を目指した.非ニュートン流体ジェットの生成過程を観察し,ニュートン流体との差異を確認した.さらに差異の主因であるレオロジー特性の影響を調査した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i) 無針注射器実現のための生体組織に対する高速マイクロジェット衝突挙動の解明と制御について,臨床実験に必要な最終ステップの突破を目指し,ジェットの生体組織への衝突・拡散現象の解明に取り組んだ.代表者は分担者(田中)と協力し,ヘアレスラットの皮膚を用いた実験を行った.赤インク液の高速ジェットをラット皮膚へ衝突させた結果,速度350 m/s以上のマイクロジェットは皮膚を貫通し,注入後5分後には皮下組織へ拡散することを明らかにした(Kiyama et al., 2016).この有望な実験結果に基づき,系統的な実験を実施した.その結果,マイクロジェットの形状による貫入への影響を明らかにした(遠藤ら,2017).またジェット生成手法にも改良を加えた(Hayasaka et al., 2017). (ii) 代表者らが開発した高粘度ジェット吐出手法により発生するジェットの速度およびピンチオフ過程を実験的に調査した.その結果,ピンチオフに至るまでに顕著な伸張効果が確認された.ジェット生成過程およびピンチオフに関する成果をまとめ,国際雑誌論文に発表した(Onuki et al., 2018).また,さらなる制御性を目指し,キャビテーションに関するユタ州立大学との国際共同研究,ナノバブルに関するアルバータ大学との共同研究を行い,成果を国際雑誌に発表した(Pan et al., 2017, Yukisada et al. 2018). (iii) 非ニュートン流体のレオロジー特性がジェット生成に与える影響を実験・数値解析により調査した.分担者(長津)所有の応力制御レオメータ(AR-G2)によりバルクレオロジー特性を計測した.その結果,バルク特性に加え,ジェット成長過程における界面レオロジー特性の強い影響が示唆された.
|
今後の研究の推進方策 |
(i) 無針注射器実現のための生体組織に対する高速マイクロジェット衝突挙動の解明と制御については引き続き研究分担者(田中)と協力して進める. (ii) インクジェット型3Dプリンタ開発のための高粘度材料吐出手法の確立・液滴塗布制御について,溶融樹脂の紙面への塗布過程を制御基盤を構築する.紙面接触直前では紙面-液体間に空気薄膜が形成され,液滴の塗布後の形状へ影響を及ぼす.そこで高粘度液体の着滴形状の予測モデルを実験・数値解析により構築する.なお代表者らは空気薄膜に関する実験および液滴塗布実験(Fujita, Tagawa, et al., Proc. APS/DFD, 2016)基盤を有する.また分担者(安藤)らは液滴衝突の数値解析コードを一部開発済みである. (iii) 非ニュートン流体ジェット生成過程の制御について,速度(成長プロセス)および体積(ピンチオフ過程)の制御を目指す.実験(田川・長津)と数値解析(安藤)を行う.また非ニュートン性流体ジェット生成メカニズムおよび速度・体積制御に関する知見を活用し,溶融金属材の塗布実験を行う.共同研究先企業と連携し,プリンテッド・エレクトロニクス用実機としての有用性を確認する. (iv) 細胞シート印刷技術のためのサブマイクロジェット生成メカニズムの解明および制御について,サブマイクロ流路を製作し,パルスレーザを用いて高粘度・非ニュートン流体のサブマイクロジェットを生成する(Xiong, et al., Lab. Chip, 2015).ジェットサイズを1マイクロメートル以下で変化させ,連続体としての記述可能性を実験的に検証する.具体的には,代表者(田川)保有の超高速度カメラ(Kirana, 5M fps)によりサブマイクロジェットの超高速度画像計測を行う. 以上の研究を加速させるため,今後は産学連携研究員を雇用する.
|