令和元年度:フォノンスペクトロスコピーによるフォノン伝導メカニズムの解明 提案するフォノンスペクトロスコピー技術の妥当性を検証するために,高温超伝導体 DyBCO 薄膜に対して超高速周期加熱サーモリフレクタンス法を適用し,熱伝導率の温度と磁場依存性を明らかにした。実験的に得られた熱伝導率の温度依存性データに対して,フォノン熱伝導モデルを適用し,カーブフィッティングによるフォノン散乱パラメータの周波数依存性を得た。 セミクラスレートハイドレート熱伝導率測定:パリレン蒸着による絶縁処理を施した非定常細線プローブを用いてTBAFなどのセミクラスレートハイドレートの熱伝導率の温度依存性をこれまでいない高い精度で行い,ゲスト分子に起因するフォノン散乱効果によって熱伝導率が非常に小さくなることを実験的に明らかにした。 令和2年度(繰越年度) 令和2年3月から論文の修正と新たな実験結果(トレハロース輸送性質の特異性を説明するために,トレハロースと同じ分子量で構造の異なるスクロース水溶液の比較結果)を追加するなどの対応を行い,令和2年4月4日に論文を再投稿し,5月1日に受理され,"Mutual diffusion coefficient of concentrated trehalose aqueous solutions including supercooled regions measured by the Soret forced Rayleigh scattering method"と題する論文は,Journal of Molecular Liquidsに掲載された。本研究の成果を当該分野として高インパクトファクター(IF > 5)ジャーナルにOpen Accessで公開できたことが大きな研究実績であるが,さらに関連する熱物性の研究発表も継続して行なった。
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