研究課題
スピンゆらぎ情報の電気的読み出し原理の確立に注力した。スピン情報伝達において、ジュール熱発生の伴わないスピン角運動量伝搬(マグノン)を活用したデバイスの基礎確立を目指した。具体的には磁性絶縁体-金属電極界面の最適化を実施した。先行研究で得た成果(常温動作するクラスターグラス物質)をもとに、スピングラスという微小なエネルギーゆらぎ状態を電気的に検出する実験を実施した。また熱ゆらぎの効率利用と信号増幅を実施した。優れた確率共鳴素子(超電力素子)の実現には、環境に存在する熱を如何に効率よく利用出来るかが鍵となる。 生体ゆらぎ機能を模倣したスピングラス材料を用いたスピンポンピング(マグノニクス)素子、スピン波デバイスなどの実用化デバイスの設計に向けて研究を行った。脳型記憶素子の実現に向けた取り組みとして、LFCSクラスターグラスのスピンポンピングと逆スピンホール効果による電圧検出により、シナプス模倣素子を実証した。強磁性共鳴(FMR)の測定結果において、ピーク間線幅;HppはPt薄膜堆積前後でに増加している。これはLFCS内部で発生したスピン歳差運動のスピン角運動量がPt薄膜内の伝導電子に散逸された結果を反映しており、正常にスピンポンピングが行われていることを示している。逆スピンホール効果によって得られた電圧VISHEは30μV程度であった。またクラスターグラス相においては、光の照射によりスピン間の凍結を溶解し、準安定状態間の遷移を制御することが可能である。これまでに報告したクラスターグラス相における準安定状態に起因する記憶現象を利用することで、脳のシナプスにおける長期増強(LTP)を模倣した電気特性を実現することができる。印加磁場を基底状態の共鳴磁場に固定し、10分毎の光照射/停止サイクルを繰り返したときのVISHEの時間発展を確認した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って実験を進めており、順調に進展していると考えられるため。
ゆらぎの効率利用と信号増幅に関する研究を進める。優れた確率共鳴素子(超電力素子)の実現には、環境に存在する熱を如何に効率よく利用出来るかが鍵となる。生体ゆらぎ機能を模倣したスピングラス材料を用いたスピンポンピング(マグノニクス)素子、スピン波デバイスなどの実用化デバイスの設計を目指す。また、共鳴現象を利用したより高効率変換に関する研究も進める。熱ゆらぎのエネルギー源として、環境中の熱エネルギーの主な起源である太陽輻射光の中・遠赤外線帯域の光の電気エネルギーへの高効率変換を、新規原理により実現を目指す。その新しいアプローチとして、共鳴効果を利用した熱エネルギー変換能の増強および積極的蓄積を実現するため、(a)表面プラズモンポラリトン共鳴効果と(b)物性ゆらぎによる確率共鳴効果によるエネルギー変換の2つのアプローチにより、熱エネルギーの効率的利用に挑戦する。具体的には、スピングラスを介したスピン波伝搬を計測することを目的として、2ポートのコプレーナ線路(CPWs)を用いたデバイスを作製する予定。これまでの研究においてY3Fe5O12 (YIG)薄膜はダンピング定数α ~ 6.7×10-5(典型的な値は10-3~10-4)と非常に小さいため、スピン波は数mmものマクロな距離を伝搬することが期待される。今後の研究では外部磁場を薄膜表面に対して垂直に印加してMSFVW (magnetostatic forward volume wave)モードの伝搬を評価する。デバイス形状としてコプレーナ導波路の電極線幅および間隔はそれぞれ10 μmとし、特性インピーダンスが約50 Ωとなるように設計しする。中心導体間の距離は60 μmである。Sパラメータの計測にはベクトルネットワークアナライザーによる特性評価を実施する予定である。
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