研究課題/領域番号 |
17H01263
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 静雄 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135536)
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研究分担者 |
尾沼 猛儀 工学院大学, 先進工学部, 教授 (10375420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光物性 / 量子井戸 / 酸化物 / 深紫外 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究結果において、MgO基板上のMgZnO系MQWから室温での深紫外発光をCLで得らえるようになるという研究の著しい進捗があったため、このMgZnO系MQWを中心に研究を進めた。 1. 結晶構造の解析、不純物分析、光物性評価から、MgZnOの成長条件の最適化を図った。従来のアセトナト原料では原料中にCが含まれるために、これが深い準位からの発光の要因であったと考察し、Cフリーの原料を用いて成長を行った。その結果、深い準位からの発光が大幅に抑えられた。また、キャリアガスの流量を自動で切り替える装置を導入し、原料供給量を精密制御して高品質のMQWを得られるようになった。 2. CLと反射測定を主な手法として、MgZnOおよびMgZnO/MgO MQWの深紫外光物性評価を行った。既設の装置では白色光源としてキセノンランプを用いているため、200 nm以下の強度が弱い。そこで、115~400 nmの範囲で高出力な連続光を出力する重水素ランプを導入した。また、光物性測定系を窒素パージ可能な構成とし、150 nmまでの深紫外領域まで高感度に光物性を測定可能な系を構築した。これにより、詳細な光物性を効率よく実施できるようになり、成長に迅速にフィードバックすることが可能となった。さらに、バンドに関する情報を得るために、反射測定の系を整備した。以上の結果、MgZnOにおいて、室温で205 nm、6 Kで199 nmの発光が得られて、本研究の一つの大きな目標であるサブ200 nmの発光を実現しえた。 3. 本研究での最終目的の深紫外発光デバイスは、pn接合ではなく電子線励起によるものを想定している。発光原理はCLであることから、実用化デバイスの構造、製造プロセスを念頭とした構造を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MgZnOにおいて、深い準位がほとんどない深紫外領域からの発光を室温においても得ることができた。これは、当初の計画ではなかなか困難と思われていたが、予想以上に早い時期に達成しえた。また、すでに窒化物半導体では物理的に不可能な室温で205 nm、6 Kで199 nmでの発光が得られた。つまり、本研究の一つの大きな目標である「サブ200 nmの発光」を予想以上に早く実現しえた。また研究を開始して2年目において、世界的にも本研究が注目されるようになり、すでに国際会議からの招待講演の依頼が2件寄せられている。これも予想以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、MgO基板上のMgZnO系薄膜およびMQWを対象とした研究を進める。 1. 結晶構造の解析、不純物分析、光物性評価から、MQWの構造、成長条件の最適化を図り、量子準位間の発光が可能な高品質MQWを実現する。成長にオゾンガスを用い等の方法により酸素欠陥を抑制し、各種光・電子物性測定により欠陥の特性を知り制御につなげる。また、成長装置の成長部におけるガス流路の工夫、原料の厳密な流量・切り替え等により、高品質のMQWにつなげる。 2. 平成30年度までにほぼ完成した115nmまで測定が可能なCL測定システムを使い、岩塩構造MgZnOからの発光を観測し、真空紫外線領域における光物性評価を遂行する。同波長領域でCL測定を行うことができるシステムは、他に例がないため、新たな知見が得られると期待できる。また、CLと反射、変調分光測定とバンド構造計算を相補的に行うことにより、発光の起源に関する検討を行う。白色光源には、既設の重水素ランプを使用する。バンド計算のため、ワークステーションを導入する。既設のCL装置では、発光の角度分布を測定することが出来る。AlNをはじめとする他の深紫外線発光材料と物性を比較し、岩塩構造MgZnOの有意性を示す。 3. 本研究での最終目的の深紫外発光デバイスは、pn接合ではなく電子線励起によるものを想定している。発光原理はCLであるが、実用化デバイスの構造、製造プロセスを念頭とした構造を検討し、深紫外発光を実現する。本年度は、既設の電子銃のフィラメントを高出力タイプのLaB6フィラメントに交換し、電子線励起による誘導放出を検討する。
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