研究課題/領域番号 |
17H01264
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 康文 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10181421)
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研究分担者 |
児島 貴徳 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70725100) [辞退]
舘林 潤 大阪大学, 工学研究科, 講師 (40558805)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 希土類元素 / フォトン場制御 / 発光機能 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、従来の発光ダイオード(LED)とは全く発光原理が異なる、ユウロピウム(Eu)添加GaN (GaN:Eu)を用いた窒化物半導体狭帯域赤色LEDの開発に、世界に先駆けて成功している。本研究では、これまでの伝導帯・価電子帯間のインターバンド遷移による発光機能ではなく、希土類元素特有のイントラセンター遷移による発光機能に着目した「半導体イントラ・フォトニクスの開拓」を目的に、この日本発オリジナルである「Eu添加GaNを用いた赤色LED」の超高輝度化を当面の目標に、半導体への原子レベル制御Eu添加手法を基盤として、フォトン場によるEu発光機能の究極的制御を実証することを目指している。 今年度に得られた成果は下記の通りである。【課題1】原子レベルで制御されたEu添加技術の更なる高度化:GaNバッファ層とGaN:Eu,Oの間にAl組成の異なるAlGaN/AlN 超格子構造を挿入することで、GaN:Eu,Oに印加される圧縮ひずみの大きさを変化させ、高い励起効率を示すEu発光中心 (OMVPE7) の発光特性の変化を調べた。圧縮応力の増大によりOMVPE7の発光ピークはブルーシフトし、発光強度は最大で1.9倍になった。その増大にはOMVPE7の存在比率が関係しており、圧縮応力とともに5.5%から10.4%に増加することを明らかにした。【課題2】Eu添加GaNマイクロ光共振器の作製とEu発光機能の操作:試料表面からのEu発光の取り出しを目的に、下部反射鏡として42ペアのAlInN/GaN分布ブラッグ反射 (DBR)、上部反射鏡として10ペアの ZrO2/SiO2 DBRからなる、共振器Q値280のマイクロ光共振器を作製した。光励起下でのEu発光強度として、12.9倍の増大を観測した。その増大はEu発光遷移確率(1.2倍)と光取り出し効率(10.8倍)の増大に起因することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Eu添加GaNに対する米国、オランダグループとの国際共同研究が軌道に乗っている。我々が世界で唯一、有するEuを原子レベルで制御して「ソフト」にGaNへ添加する技術を駆使して作製した試料を、各グループが独自に有するEu発光特性やEu局所構造を評価する技術を用いて調べることにより、本研究課題で求められる「フォトン場制御」の鍵を握る、Eu発光特性への効果が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度での研究課題を継続的に発展させながら、より大きなフォトン場とのカップリングが期待されるナノ光共振器へ移行する。 【課題3】Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器の設計:DBRを用いたマイクロ光共振器よりも高いQ値を示すフォトニック結晶ナノ光共振器の設計に取り組む。フォトニック結晶を利用するにあたって、作製の簡便さと性能の高さのバランスが良い「2次元フォトニック結晶スラブ構造」が広く用いられている。この構造において、周期構造がない面垂直方向での光制御は全反射によってなされるため、スラブを構成する物質と、その周囲のクラッド層となる物質の屈折率差を大きく取ることが重要である。もっとも良いのはクラッド層を屈折率1である真空(空気)とすることである。finite-difference time-domain (FDTD)法を用いて、Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器の設計を行う。 【課題4】Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器の作製とEu発光機能操作:FDTD法を用いたシミュレーションにより得られたEu添加GaN 2次元フォトニック結晶光ナノ共振器の作製を行う。ここで、鍵を握るのは共振器部分を中空に浮かせる技術である。一般に、スラブを構成する材料と基板との間に犠牲層を挟み、これを選択ウェットエッチングにより除去(アンダーカット)する方法を用いる。得られた光ナノ共振器において、光励起パワーに対するEu発光機能のスタティック測定やダイナミック測定を行い、Euイオン間の強い相関に起因する超放射現象などの究極的なEu発光機能の発現可能性とEu発光強度の超高輝度化を検証するとともに、そのメカニズムを解明する。
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