研究課題/領域番号 |
17H01271
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高尾 英邦 香川大学, 工学部, 教授 (40314091)
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研究分担者 |
森 宏仁 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (20568844)
藤原 理朗 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (20380181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | センシングデバイス / 医療用センサ |
研究実績の概要 |
一層の低侵襲化と高度化が求められている内視鏡医療の発展に向けて,本研究では内視鏡下の手術において執刀医が求める様々な知覚情報を治療器具上に集積したセンサで取得・表示する「内視鏡知覚センシング技術」を開発し,医師が患者体内の状況や触診で得る情報を内視鏡下で取得しながら安全に手術を行なう「触診内視鏡手術」の実現に向けた異分野融合型研究を推進している。 平成29年度は,内視鏡下での「体内気圧」,「温度」,「臓器硬さ」,「臓器表面性状」を検出する集積型マイクロセンサの実現に向けた基礎検討を行い,医学領域と工学領域のニーズとシーズの間に存在する技術的課題を解決するセンサデバイス構造を設計した。 実験では,消化器官内部の過酷な酸環境にも耐える状態で軟性内視鏡や手術鉗子上に装着するための最適な実装条件や,センサに必要な保護構造の検討,要求されるセンサ性能などについて議論を重ねるとともに,必要に応じて検出原理を再構築するなどの検討を行った。実施した動物実験により,執刀医の経験や臨床学的知見を活かすために必要なセンシング情報が明らかとなり,それを内視鏡先端などの微小な領域に実装する技術も開拓することができた。 軟性内視鏡に実装するセンサデバイスについては,その成果を取りまとめて国際会議で発表するとともに,学術論文2件に掲載することができた。また,腹腔鏡手術に向けたセンサデバイスについては,今後得られた成果と知見を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は,4年間で当初の研究目標を達成する計画である。開発するセンサは,軟性内視鏡に実装するデバイスと,腹腔鏡手術用器具に実装するデバイスの2種類である。それぞれの応用でセンシングに必要な仕様を決定し,適切なフィードバックを得られるように,各応用側研究者と密接な連携関係を構築して研究を進める計画である。 開始初年度の平畝29年度は,それぞれ異なる医療分野でのセンシングデバイスに関するニーズ取得とデバイス構造の検討を進めることが中心課題であった。それらを元にして,「軟性内視鏡用集積化臓器硬さセンサの製作」と「鉗子上における滑り検知の原理構築とセンサ設計」を具体的な課題とした。 本年度,軟性内視鏡用の臓器硬さセンサの製作を複数回実施した結果,良好な特性を示すデバイスが実現された。このことから,実際の内視鏡搭載による動物実験の実施に向けて,順調な進捗状況にあるといえる。また,鉗子上における滑り検知の原理構築についても検討を実施し,様々なトライ・アンド・エラーを経験しながら,良好な結果につながる新しい検出原理を見いだすことができた。これについては知的財産の申請を行う準備を進めている。 平成30年度に向けては,軟性内視鏡に搭載できる集積型のセンサに関する動作検証,ならびに,内視鏡による触診システムの評価検証を進める計画となっており,その実現に向けておおむね順調に進展しているといえる結果を現時点で得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,センサの検出原理と構成の基礎検討を完了し,それらを早期に実現して,医学部での実証権等へと進めてゆく。具体的には,消化器内科における集積型センサの動作検証(臓器実験)と消化器外科における触診鉗子による内視鏡トレーニングでの評価検証に進めてゆく。そこで得られた医師(執刀医)からの使用感や得られる情報の質に関するフィードバックを得ることで,センシングデバイスの機能と性能を実用的に高めてゆく。センサデバイスの設計と製作,実装から医学部における執刀医の評価・フィードバックのループを繰り返すことで,先進内視鏡医療の分野で実用可能なセンシング技術の実現へとつなげてゆく。その後,動物実験において十分な性能と信頼性がえられた段階で,内視鏡医療においてこれまで数量化されていなかった部分をセンサにより定量化してゆく。その有効性や必要性については,医師の様々な意見を反映しながら,真に役立つ技術の実現を目指してゆく。
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