研究課題
2019年度は,異種構造材料・電子基板材料の組み合わせを問わない低温大気圧ハイブリッド接合による複合化と,高信頼性化を同時に達成する接合プロセスの確立を主に行った.また,薄型歪センサ内蔵軽量ハイブリッド構造材料の実働検証のための基礎検討を行った.その他,2018年度の繰越案件である接合装置の設計試作を完了した.本接合手法は,エタノールなどの低級アルコール蒸気を微量含有した大気圧窒素雰囲気中に各種試料を導入し,そこで真空紫外光を照射することで,光自体のエネルギーによる表面清浄化(有機コンタミ除去)と,アルコールが分離することで生じるラジカル種を利用した無機酸化物還元と極薄架橋層形成を連続的に達成するものである.特に,無機材料表面に対して,陽イオンサイトにカルボン酸塩が多座配位したアルキル鎖が伸長し,末端の水酸基が有機材料側と脱水縮合することで強固な結合が達成されるとともに,カルボン酸塩側で加水分解劣化が平衡状態にされる(鈍化される)ため,有機 - 無機ハイブリッド体に不可避な劣化反応を抑制することができるようになっていることが新規な点である.上記のメカニズムで架橋が形成されることを,透過電子顕微鏡観察などを通して実証したほか,架橋層厚の増加挙動が蒸気圧モデル(biphase model)で近似可能なほか,化学反応律速領域では,層厚がアルコール分子密度と紫外線照射時間の積に比例すること,すなわち簡易なパラメータで制御可能な接合プロセスであることを見出した.また,85℃85%RHでの高温高湿放置試験を実施した接合体に機械的強度試験や界面微細構造観察を行い,放置6ヶ月経過後も母材破断強度並びに強固な結合に資するσ結合が界面に残存することを確認した.また,実証試験として用いる歪センサの基本設計を,連携研究者主体で行った.
1: 当初の計画以上に進展している
- 強固な接合だけではなく,耐水信頼性を大幅に向上しえる低温大気圧ハイブリッド接合プロセスがほぼ確立された.移動体のIoTに不可欠な「電子基板を内包するハイブリッド軽量構造材料」の高信頼性化は当初計画にはなかったものであり,想定以上に検討が進行していると言える.- 可撓性を有する歪センサの基礎設計を前倒しで開始している.- 繰越案件のロール to ロール接合機構の製作を完了した.実証試料の製作に利用できる.
2020年度は,実働材料に対する本接合プロセスの適用条件の明確化と,接合性能検証,ならびに信頼性試験を行う.並行して,薄型歪センサ基板の製作と,それを有機 - 無機ハイブリッド構造材料界面に封止接合をするための試料製作を行い,実証試験を行う.接合手法に関しては,チタンやTi64などの,実際に移動体で用いられている軽量金属・合金構造材料と,ポリエーテルエーテルケトンやポリイミドなどの耐熱・耐化学薬品性を有する有機構造/電子基板材料を対象とし,各々最適接合条件を明確にする.単純板材試料を用いて製作した接合試料について,機械的強度試験や高温高湿試験を実施し,界面微細行動,特に結合状態の変化を観察する.実働性検証については,前年度に製作したロール to ロール接合機構を利用し,A4程度の大きさの歪センサ基板内蔵ハイブリッド構造材料を試作し,界面近傍の歪検出可否を検証する.
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Materials and Design
巻: - ページ: -
Nature Communications
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41467-020-14426-6 2019
Nature: Scientific Reports
巻: 9 ページ: -
0.1038/s41598-018-37052-1