研究課題/領域番号 |
17H01282
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
南出 泰亜 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (10322687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非線形光学 / 非線形波長変換 / テラヘルツ波 |
研究実績の概要 |
本年度は高電界強度テラヘルツ波発生に向けたニオブ酸リチウム結晶中のフォノンポラリトンから高効率にテラヘルツ波を取り出すために必要な冷却効果によるフォノンモードのダンピング抑制、結晶組成との関連、フォトリフラクティブ効果の影響など高強度励起条件における非線形光学結晶の組成や品質による影響を調べた。 室温下におけるテラヘルツ波パラメトリック発生での主な損失はフォノンモードのダンピングに起因する。そのため結晶冷却によるダンピング抑制が高電界強度テラヘルツ波発生に必要である。本年度は液体窒素温度の77Kまでニオブ酸リチウム結晶を冷却した条件でテラヘルツ波パラメトリック発生を行った。冷却によって損失を約1/3に抑制した結果、室温下でのテラヘルツ波出力と比べて得られたテラヘルツ波出力は2THzで約3倍を達成した。得られたテラヘルツ波を集光したところほぼ回折限界まで集光でき、電場強度に換算して~10MW/cmの高電界強度を達成した。 また、フォノンポラリトンを介した波長変換における光―テラヘルツ波波長変換ではテラヘルツ波と光学・音響フォノンモード結合が波長変換効率に大きな影響を与えることが分かっているためコングルエント組成とストイキオメトリック組成のテラヘルツ波パラメトリック発生への影響を検証した。実験では異なる励起条件(パルス繰り返し周波数200Hzおよび100kHz)でテラヘルツ波発生を行ったところ、コングルエント組成ではフォトリフラクティブ効果が発生しテラヘルツ波出力が制限されることがわかった。コングルエント組成の結晶におけるフォトリフラクティブ効果の発生閾値は平均入力光強度50kW/cm2、繰り返し周波数100kHzであった。一方で、ストイキオメトリック組成の結晶ではフォトリフラクティブ効果は起きなかったことから、高強度励起時におけるストイキオメトリック組成の有効性がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り高電界強度テラヘルツ波発生に向けたテラヘルツ波-光学・音響フォノンモード結合の学理探求を行った。具体的にはニオブ酸リチウム結晶中のフォノンポラリトンから高効率にテラヘルツ波を取り出すために必要な冷却効果によるフォノンモードのダンピング抑制、結晶組成との関連、フォトリフラクティブ効果の影響など高強度励起条件における非線形光学結晶の組成や品質による影響を調べた。結果として、テラヘルツ波パラメトリック発生によって~10MW/mの高電界強度を達成しており、計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、目標とした電界強度100MV/cmに向けた100mJ級の励起光源の構築を行い、高電界強度テラヘルツ波発生を行とともに電場計測システムの構築を行う。具体的にはニオブ酸リチウム結晶中の損失は冷却によるダンピング抑制によって抑えることでき、大面積励起光によるパワースケーリングが期待できる。またニオブ酸リチウム結晶はストイキオメトリック組成を用いることで100mJ級の励起強度においてもフォトリフラクティブ効果を起こすことなく高効率にテラヘルツ波パラメトリック発生が可能となる。これらによって高強度電界テラヘルツ波発生に向けて推進していく。 また利得スイッチ光源を用いたテラヘルツ波光源と光サンプリング用フェムト秒レーザーとの同期実験を行い、同期可能なテラヘルツ波パラメトリック発生システムとしてテラヘルツ波電場の計測を行う。
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