研究課題/領域番号 |
17H01284
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石田 哲也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60312972)
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研究分担者 |
高橋 佑弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10726805)
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50436333)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンクリート / カルシウムシリケート水和物 |
研究実績の概要 |
1.様々な物理化学組成を有するフライアッシュのポゾラン反応モデルと水和反応モデルの高度化 異なる火力発電所から排出されたフライアッシュを入手しフライアッシュのキャラクタリゼーション結果からポゾラン反応過程を追跡する一般化モデルの構築に成功した。フライアッシュのキャラクタリゼーションとしてSEM-EDSを用いた新たな相組成分析手法を開発した。元素マッピングの結果に対してSi, Ca, Al等の閾値を設けることで石英、ムライトなどの結晶質、並びに非晶質としてSiリッチなアモルファス成分、Alリッチなアモルファス成分に分離することに成功した。さらに窒素吸着法により測定される比表面積は未燃カーボン量によって大きく相違することを突き止め、画像解析による比表面積測定法の優位性について検討を行った。以上の手法により同定されるフライアッシュの特性をパラメータとして水和反応モデルに取り込み、従来は説明ができなかった異なる種類のフライアッシュに対してポゾラン反応を精度良く推定することが可能であることを示した。 2.C-S-H、C-A-S-Hの特性に基づく空隙構造形成モデルの構築 水和途上の条件によって二次元的・三次元的に形成されるC-S-Hの相違をpHを変化させた溶液中で成長するC-S-HのSEM画像により把握することに成功した。pHが比較的低い条件においてはセメント粒子表面での二次元的な成長が、また高い条件では三次元的な形態を取ることを確認した。この知見に基づき普通並びに低熱ポルトランドセメントとフライアッシュの相互作用を加味した水和反応モデルを構築した。またフライアッシュ近傍におけるC-S-Hの化学組成と空隙構造を把握するためにSEM-EDS及びFIB-SEMを用いた測定を実施した。SEM-EDS分析により場所によってカルシウムシリカ比が大きく相違すること、またFIB-SEMによる観察から内部ポゾラン反応相と外部C-S-Hの三次元構造が異なることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フライアッシュに含まれる様々な相を分離・定量するキャラクタリゼーション手法を開発し、各相の特性に応じた反応現象を重ね合わせることで既存モデルの精度向上と適用範囲の拡大に成功したことは大きな成果である。一方、フライアッシュのバラツキの大きさと試験体の前処理方法の難しさなどから、SEM-EDSによる元素分析は当初の予想以上の困難さが生じ、信頼性のある実験結果を得るためのノウハウ蓄積に時間を要した。ただし、その過程を通じて実験方法を確立することができたため、来年度以降は効率よく研究が進められるものと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果に基づき,以下の項目について研究を行っていく. 1.フライアッシュのポゾラン反応モデルの検証 今年度提案した反応モデルの妥当性を、別の観点から精緻に行っていく。すなわち、本モデルを構成するSiおよびAlリッチなアモルファスの反応速度および温度依存性について、システム総体の挙動から逆解析的にパラメータを求めており、各相の反応を直接測定することが必要である。そこで、来年度は、成分を制御して作製する合成ガラスのアルカリ溶解試験、および組成を大きく振ったフライアッシュを複数集めた構築モデルの検証を実施する。ここで、高橋および博士研究員が外部の研究機関(香港理工大)と連携を取りながら実験を行うものとし、石田がモデルの検証を実施する。 2.水和物のキャラクタリゼーションと、それに基づく空隙構造モデルおよび時間依存構成則の構築 フライアッシュ混入率を変えた系に対して、FIB-SEMを用いた三次元空隙構造の測定を試みる。フライアッシュ近傍からFIBで試料を切り出し、10nmピッチで切削した2次元断面を三次元に再構築することで、フライアッシュ内部、セメント内部、および両者の近傍に生成される空隙の幾何構造を同定する。それに基づき、空隙構造モデルの妥当性チェックを行う。本研究は、博士研究員と修士学生が、物質材料研究機構と連携して進めていく。また、長期継続するポゾラン反応の特性を理解するため、長期の強度発現性状や収縮・クリープ挙動に関する実験結果を取得するとともに、モデルによる検証を行う。微細空隙構造の形成・特徴については石田が、自己乾燥・自己収縮の進展、また温湿度履歴と時間依存挙動の関連を浅本が担当し、適切な役割分担により効率的に研究を進める。
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