研究課題/領域番号 |
17H01287
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清野 純史 京都大学, 工学研究科, 教授 (00161597)
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研究分担者 |
飛田 哲男 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00346058)
小野 祐輔 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00346082)
酒井 久和 法政大学, デザイン工学部, 教授 (00360371)
古川 愛子 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00380585)
鈴木 崇伸 東洋大学, 理工学部, 教授 (50256773)
鍬田 泰子 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (50379335)
庄司 学 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60282836)
野津 厚 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 領域長 (60371770)
宮島 昌克 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (70143881)
奥村 与志弘 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (80514124)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内陸型・海溝型地震 / 強靭化 / 頑強化 / 社会インフラ / 地震断層 / 液状化 / ライフライン / 耐震設計 |
研究実績の概要 |
2018年度も内陸型・海溝型を問わず重要インフラ施設に及ぼす地震動の影響を多角的な観点から検討を行った。メンバーの多くは2018年に起こった台湾花蓮地震、大阪府北部の地震、北海道胆振東部地震、インドネシアのスラウェシ島パル地震など、地震被害調査に参加し、本プロジェクトに関係する有用な知見や資料を得た。地震動に関しては、これまでに作成した2016年の熊本地震における震源モデルを熊本港周辺の地震動の再現に適用し、その妥当性を確認した。また、SPH法を用いて基盤層で出現した逆断層変位に伴い堆積地盤に生じる変形の性状について検討した。インフラに関しては、地震、津波による下水道施設の未想定被害について検討するとともに、ソフト・ハード両面からの上下水道減災対策の最適化手法について検討した。ライフライン施設の劣化は、材料的な劣化と古い基準による不十分な性能があると考え、古い管の強度確認実験を進めるとともに、熊本地震で被害を受けた古い管の被害分析を行った。水道管路の新たな耐震性評価手法を開発するにあたり、兵庫県南部地震及び東日本大震災時の水道管路の被害について、液状化の影響を受けずに被災した管路を抽出し、地盤震動による被害管路がPGV Gradientと相関が強いことを明らかにした。さらに、東北地方太平洋沖地震や南海トラフ巨大地震津波を対象として、強震動・液状化及び津波の複合作用下における社会インフラの構造信頼性に関する実証的なデータ構築を図った。盆地の谷部の基盤面に沿って埋設されている既存サイホンを対象にして地震応答解析を行い、構造物の勾配が大きくなる箇所で断面力が大きくなることが明らかにした。鉄道無筋コンクリート橋脚の再現解析に取り組み、数値解析結果を振動台実験の結果に近づけることができた。巨大地震津波は強震動と津波の両方の影響を受けて地盤の剛性が変化することを定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会インフラは、内陸型・海溝型の地震を問わず、まず強さで抵抗しなければならず、主にハード対策による抵抗力、すなわち『頑強性』を評価し、定量化を行なう必要がある。社会インフラの頑強化・強靭化を効率的に進めるための地震動の包括的な評価手法の開発に関しては2018年度に様々な場所で起こった地震の現地調査および微動や観測記録の解析を行い、各種インフラ被害とその原因を検討した。地震動に関しては、断層モデルの妥当性評価と、強震動パルス生成域という概念を取り入れた長周期成分を含む永久変位に対する新たな手法の検討も含め、インフラ入力に反映させるための一連の流れの展開・適用を図った。2018年に台湾で発生した花蓮地震の被害調査と微動観測を行い、断層近傍の地震動の詳細な検討を行った。断層変位を含む強震動及び津波の影響を考慮したインフラの頑強性評価と定量化に関しては、各種社会インフラを対象とした数値計算を進め、地盤震動や埋設管路の被害要因に関するパラメトリックな3次元数値解析を継続し原因御究明を図った。津波作用を受ける社会インフラの物理的損傷のメカニズム解明のための数値解析や粒子法の一つであるSPHに改良を重ね、基盤層で出現した逆断層変位に伴い堆積地盤に生じる変形の性状明らかにするとともに、鉄道無筋コンクリート橋脚の縮小模型の再現について改良個別要素法の精度の向上を図った。災害への対応力や災害からの回復力を保持するために、ハード・ソフト対策による回復力、すなわち『強靭性』を評価し、定量化を進めている。東北地方太平洋沖地震や南海トラフ巨大地震津波を対象として、強震動・液状化及び津波の複合作用下における社会インフラの構造信頼性に関する実証的なデータ構築もその一つである。リスク評価指標の定量化は完成に至っていないが、それに基づく頑強化・強靭化の方策の検討を始める。以上より、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
内陸型・海溝型双方の広範な特徴を有する地震動に対し、社会インフラのハード対策による抵抗力(頑強性)の増強と、それにソフト対策を取り入れた回復力(強靭性)の向上をバランスよく推進するための方法論を提示し、その定量評価を行うという目的に鑑み、2019年度は以下の項目に力点を置いて研究を推進する。 社会インフラの頑強化・強靭化を効率的に進めるための地震動の包括的な評価手法の開発に関しては、断層モデル構築の妥当性を受け、強震動パルスを含む長周期・長継続時間地震動や断層変位をライフラインシステムに反映させるための方法論を展開・適用する。 断層変位を含む強震動及び津波の影響を考慮したインフラの頑強性・強靭性評価と定量化に関しては、熊本地震で被害になった古い管の被害分析を基に、古い設備の性能評価を進める。SPH法を拡張し、基盤の断層変位により堆積地盤中の線状構造物の頑強性評価のために、発生する応力の特性を明らかにする。大阪府北部の地震では、材料強度が低い経年の大口径管が地震で管体破損していることから、管路の腐食劣化や材料強度による大口径管路の耐震性について評価する。津波に関しては、2018年インドネシア・パルにおける現地調査の基礎資料を基に、インフラの頑強性評価のための検討を進める。地震、津波、豪雨などが同時に起こる、マルチハザードに対する上下水道施設の対応策についても検討する。強震動・液状化及び津波の複合作用下における社会インフラ(橋梁、長大橋、平面道路、及び、そのネットワーク)の構造信頼性評価を継続する。堅牢な構造物は氾濫流の挙動に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。本年度はこうした影響を考慮した頑強で強靭なインフラとしての既存RC構造物の活用方策について検討する。3年間の研究を総括し、社会インフラの耐震/耐津波性能、およびネットワークとしての頑強化・強靭化の方策を提示する。
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