研究課題/領域番号 |
17H01289
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野田 利弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (80262872)
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研究分担者 |
中野 正樹 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00252263)
中井 健太郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (60402484)
酒井 崇之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20773592)
吉川 高広 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20771075)
山田 正太郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70346815)
河井 正 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10371436)
淺岡 顕 公益財団法人地震予知総合研究振興会, 地震防災調査研究部, 副首席主任研究員 (50093175)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不飽和土 / 土構造物 / 複合災害 |
研究実績の概要 |
① 不飽和土三軸供試体の吸水破壊メカニズムの解明 : 降雨による斜面や盛土の変形・破壊メカニズムの解明を見据えて、不飽和土三軸供試体の吸水破壊試験とその数値シミュレーションを行った。実験では、不飽和シルト供試体に対して三軸圧縮過程中に荷重一定条件下で間隙圧を上昇させる吸水試験を行い、供試体が吸水時に軟化して、軸変位が急激に生じて破壊に至ることを示した。その数値シミュレーションにおいては、慣性力を考慮可能な不飽和土対応の有限変形解析コードにより、供試体が吸水軟化により加速度を伴って破壊に至る挙動の再現に成功するとともに、「塑性圧縮を伴う軟化」と「塑性膨張を伴う軟化」の二つの吸水破壊メカニズムがあることを明らかにした。 ② Full formulationに基づく解析コードの妥当性検証 : 透水性が極めて高い土の動的変形問題を解くために開発したfull formulationに基づく解析コードの妥当性検証を、一次元動的弾性変形問題を例題として行った。この問題の理論解と解析解が良く整合するとともに、支配方程式が減衰波動方程式に帰着され、理論解が固有値に応じて性質の異なるモード(過減衰~減衰振動)の重ね合わせで表現されることを明らかにした。 ③ 解析コードの高速化・大容量化 : 解析コードをOpenMPとMPIのハイブリッド並列化により高速化・大容量化を進め、その解析コードを用いて、横ずれ断層に関する大規模な3次元弾塑性有限変形解析を行った。具体的には、横ずれ断層の形状をランダムに変えた複数ケースに対して表層地盤の変形を解いた結果、ひずみの局所的増大が「断層線の傾きが最大の拘束性屈曲」において優先的に発生することが示された。この結果は、地下の主断層線の形状が特定された際に、その変位により生じる副次断層の変位がどこで卓越するかを予測する際の手がかりになり得ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述①について、不飽和土の吸水破壊メカニズムに関する実験事実を蓄積することができた。また、その数値シミュレーションにおいて、土供試体が吸水軟化により加速度を伴って破壊に至る挙動の再現に成功したことは、降雨による斜面や盛土等の変形・破壊メカニズムの解明に大きく近づいたと考えられる。前述②について、u-p formulationでは計算不可能な超高透水性土の変形メカニズムの解明が進んだ。前述③について、解析コードの高速化・大容量化が着実に進み、これまでは困難であった大規模計算を数多く実施できるようになってきた。 以上のように、各研究課題に対して、研究計画に従って一定の成果を得られているため、おおむね順調に進んでいると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前述①の研究成果を受け、降雨および地震と降雨の複合外力に対して、斜面や盛土等の実地盤・土構造物の変形・破壊挙動の評価、さらにはその対策工法の検討を進める。また、前述②のFull formulationに基づく変形解析コードを用いた研究課題を推進するために、引き続き常勤の研究員を雇用する。当研究員は前述③の並列化による解析手法の高速化・大容量化も併せて進める。
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