研究課題/領域番号 |
17H01290
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
肥後 陽介 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10444449)
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研究分担者 |
音田 慎一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50402970)
高野 大樹 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (80626218)
大竹 雄 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90598822)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 堤防 / 表面侵食 / 浸透流 / 地震動 / V&V / 解析精度 |
研究実績の概要 |
■表面流・浸透流の同時解析法の開発:水と空気の移流方程式とNavier-Stokes式を解く表面流・浸透流同時解析手法を確立した.透水係数の飽和度依存性を導入し,不飽和浸透流解析へ拡張し,越流解析及び越流を伴わない不飽和堤防への浸透解析で適用性を確認した. ■表面侵食メカニズムの解明:流速を単一方向とした単純斜面模型による侵食実験を実施した.実験試料には,非粘着性土と粘着性土を用い,侵食挙動を比較した.侵食過程を高分解能高速度カメラで撮影し,画像相関法 (DIC)により土粒子の変位と撮影領域の変位場・ひずみ場を定量化することで,①従来の土粒子輸送による侵食と②表面土のせん断破壊を観察することに成功した. ■堤防挙動解析のためのMaterial Point Methodの検証:固体のみの一相系問題,固液連成の二相系問題を取扱い,静的及び動的条件下における,微小変形及び有限変形問題について理論解とMPMによる数値解との比較からMPMの検証を行った. ■地震動による堤防の破壊予測精度の定量化:地震動による液状化を考慮した変形量の予測精度の定量化を実施した.解析結果との比較対象として,堤防の地震時被害の典型的なパターンである,基礎地盤の液状化を考慮した動的遠心模型実験結果を選定した.入力パラメータから数値解析結果を得る代替モデルを構築することにより,合理的な予測精度(幅)の定量化手法を新たに確立した.具体的には,天端の沈下量,法尻の水平変位量の予測精度を定量化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
堤体土の表面侵食実験の結果,当初の予想に反し表面侵食が土粒子10数個分の微小なスケールで発生していることが明らかとなった.研究遂行上,画像解析による変位ベクトルの定量化には微小領域での観察結果が不可欠であることから,高解像度の画像を取得するため観察領域を縮小化した侵食実験を追加で実施する必要が生じた.このことから,表面侵食実験に遅れが生じたが,その後の実験で良好な結果を得ることができた. その他の課題の,表面流・浸透流の同時解析法の開発,堤防挙動解析のためのMaterial Point Methodの検証,地震動による堤防の破壊予測精度の定量化については,当初計画通りに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
■二流体混相流モデルと土の多相連成MPMの連成:水と空気を一体の流体とした気液混合体混相流モデルを空気と水の流れを個別に解法する,二流体混相流モデルへ拡張し,表面流・浸透流の同時解析と不飽和土内のサクション(空気圧と水圧の差)の評価が可能な解析法を開発する.二流体混相流モデルと不飽和土の土・水・空気連成MPMを,サクションを介してカップリングし,表面流・浸透流と土の変形の同時解析法を構築する.粒子輸送に基づく侵食モデルで,越流時の浸透・侵食解析の定性的な適用性を確認する. ■表面侵食メカニズムの解明とモデル化:引き続き単純斜面条件の実験を実施し,結論をより実証的なものとする.表面侵食はせん断破壊によって記述できることを明らかにする.流速から求まるせん断力,画像解析で得られる破壊面の角度から,単純な摩擦則であるMohr-Coulombの破壊規準を適用し,表層土の見かけの粘着力c,摩擦角φを評価する. ■堤防模型による越流侵食実験: 堤防模型による越流侵食実験を実施し,堤防全体の破壊過程及び法肩から法尻部にかけての堤防のほぼ全域における侵食過程及び表面流を高速度カメラで観察し,表面侵食による堤防の破堤メカニズムを明らかにする.堤体の土質や表面流の条件を変化させることにより越流から完全な破堤に至るまでの堤防の粘り強さを評価する. ■提案手法の検証:表面流・浸透流と土の変形の同時解析法を検証する.固・液・気の三相系問題を取扱い,静的問題として斜面の安定問題を対象とし,見かけの粘着力のサクション依存性を考慮した理論解を求解し,比較を行う. ■提案手法の予測精度の定量化:引き続き,地震動による変形量の予測精度の定量化を実施する.中小規模の外力状態および大規模荷重時における予測精度(幅)を定量化する手法を整備する.
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