研究課題/領域番号 |
17H01302
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 哲 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60230455)
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研究分担者 |
吉敷 祥一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00447525)
伊山 潤 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30282495)
清家 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60236065)
長谷川 隆 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 上席研究員 (70355999)
石田 孝徳 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80746339)
田中 剛 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90243328)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鉄骨構造 / 耐震性能 / 連続地震 / 非構造部材 / 機能維持 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで建物の共用期間中に1度遭遇する可能性があるかどうかという頻度での強い地震(設計レベルの地震と呼ぶ)が1度作用した場合にも倒壊させないことを目標として設計されてきた中低層の鉄骨造建物を対象として、熊本地震のように設計レベルあるいはそれを上回る強い地震を連続して受けた場合に、構造体のみならず壁などの非構造部材を含む建物への損傷がどのように進展するかを定量的に評価し、耐震設計法・改修法の提案に繋げようとするものである。大地震での本震に相当する強い地震が繰り返し作用するような状況を想定した研究がこれまで行われてこなかったことから、鉄骨造建物に繰り返し強い地震が作用する状況を再現した体系的な実験ならびに解析を行ってきた。 研究4年度目にあたる令和2年度においては、初年度(平成29年度)に計画し、2年度目(平成30年度)と3年度目(令和元年度)に実施した、非構造部材を設置した1層1×1スパンの実大架構を用いた、繰り返し地震動を模擬した載荷実験でえられた構造体および間仕切り、外装材といった非構造部材の損傷過程に関するデーターの詳細な分析を行うとともに、耐震性能の決定要因となる構造要素である合成梁の実験結果の詳細な分析を行った。また、多層骨組を対象とした地震応答解析については、建物規模(層数)や部材性能、入力波の種類や強さ、組み合わせをパラメーターとした体系的な応答解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時点においては、東京オリンピックを控えた建設需要の逼迫、特に鋼材・高力ボルトといった実大架構実験に用いる試験体の製作に必要な材料の枯渇・高騰と人手不足の影響を大きく受け、研究の中核をなす実大架構実験の実施までに、試験規模の縮小といった計画の見直しも含め、多くの時間と労力を割くことになり、また、当初計画より遅れた時期からの実験となってしまった。立ち上がりでは遅れたものの、研究期間の半ばにおいて実際の施工条件なども反映した間仕切り、外壁といった非構造部材も設置した実大架構に対する繰り返し地震動を模擬した載荷実験が実施できただけではなく、参画した研究分担者や研究に参加した大学院生たちの努力により、これまでほとんど行われてこなかった非構造部材を対象とした損傷モニタリングの試行など、当初計画した以上の充実した内容を含む実験研究となり、多くの有意なデータを得ることができた。得られた知見の中で、特に重要なものとしては、以下が挙げられる。 1)非構造部材の損傷過程については、これまで未解明のまま残されていることも多かったが、静的載荷としたことで途中過程の詳細な観察により、本実験の範囲ではあるが損傷過程が明らかとなった。 2)連続して強い地震を受けた受けた場合の建物の挙動について、構造体だけでなく非構造部材も含め、解析検証を行っていく上でのベンチマークとなるデーターが得られた。 3)大地震時に建物の安全性だけでなく機能維持レベルについても瞬時に判定していくためのモニタリングシステムの可能性が検討できた。 合わせて、部材レベルでの実験や、体系的な数値解析による検討も行ってきている。実験ならびに、地震応答解析により得られた知見を取りまとめていく作業の中で、国内外の学会での口頭発表に加え、International Journalなどへ投稿を行っているところであり、進捗状況としては順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
非構造部材を含む鉄骨造建物の実大架構実験ならびに構造要素の実験結果に基づく分析結果および、地震動だけでなく構造体に関わる様々なパラメータを振った多層骨組の地震応答解析結果等、これまで行ってきた研究成果に基づき、設計レベル、あるいはそれを上回る強い地震を連続して受けた場合の損傷の進展状況(残存耐震性能)、建物としての機能維持レベルの変化を踏まえた設計法・改修法として取りまとめる作業を行う。その中で、必要となった解析等も追加して行う。
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