研究課題/領域番号 |
17H01303
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田村 哲郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90251660)
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研究分担者 |
河合 英徳 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00735376)
野津 剛 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, グループ長 (10601023) [辞退]
坪倉 誠 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (40313366)
吉川 優 大成建設株式会社技術センター, その他部局等, 課長 (60393667)
小野 佳之 株式会社大林組技術研究所, 都市環境技術研究部, 課長 (70393593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 風荷重 / 耐風設計 / ビックデータ / LES / アンサンブル推定 |
研究実績の概要 |
まず遠隔観測データに基づく大気境界層の変動風速データの整備を行い、気象要因に基づく低周波風速変動を把握した。 基本的角柱状建物まわりの高解像度測定点での圧力超細密分布に関するLESを実施した。三次元角柱表面の風圧特性に関して、従来の風洞実験等に比べて、表面のサンプル数を細密に設けた大規模計算を実施し、角柱の隅角部付近において極大な負圧が発生することを明らかにすると共に、従来の評価方法では荷重が過大評価される可能性があることを示した。さらに極大格子数の非構造格子で計算モデルを作成し、極端に高いレイノルズ数で隅角部の丸い角柱を対象にLESを実施し、臨界状態における抵抗軽減を確認した。カーテンウォール形状を再現した高層建物モデルを対象としてLESを実施し、窓部材ごとに面平均ピーク外圧に基づく高精度な外装材用風荷重評価を行った。離散点風圧データによる従来の時間平均ピーク外圧と比較すると、特に建物側面の負圧領域において差が顕在化することが確認された。 基整促のプロジェクトにおいて提示された都市域に存在する高層建築物に作用する風圧データを対象としながら、BCMにより数億レベルのメッシュの計算モデルを対象にLESを実施し、精度検証を行った。 CFDにより生成された流入変動風の平衡性確認した。建築物への強風作用を検討する上で、接近流は非定常の乱流でなければならない。CFDでは一般に乱流境界層の特性を失わないように時空間変動データが提供されることから平衡性を有する。風工学の風洞実験では、厚い境界層が必要になるため一般に平衡性が確保されずに、流れ方向の位置によっては乱流構造がずれる問題点がある。ここではCFDにおける流入変動風の平衡性を確認し、今後の解析における基礎を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度を高精度計算手法の構築と合理的風荷重推定のための準備と位置づけ、実績の概要に示すような成果が得られた。基礎的な課題に対して高解像度モデルにより十分高精度な結果が得られることを確認するとともに、新しい計算手法であるBCMの適用性まで明らかにしている。また、本プロジェクトでの重要課題である流入変動風についても十分な知見が得られた。以上より、現在までの進捗状況は計画を上回っているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、複雑環境下での設計風速・風荷重の直接評価を実施することをめざし、以下のことを研究項目とする。 実在する建築物を想定したとき、最近の建築物では、日射遮蔽の目的から外壁に縦フィン、横リブなどの環境配慮型の建築パーツが取り付けられることが多く、また高層住宅では、バルコニーなどで大きな風圧が発生することが指摘されている。ここでは、建築パーツに作用する風荷重をLESにより算定し、両者を比較検討して耐風性能を確認する。 地表被覆に関するビッグデータを活用して都市の計算モデルを作成する。高い建築物で構成される都市被覆の上空で乱流境界層が発達する場合、強風の鉛直プロファイルは必ずしも普遍的な特性として把握されている訳ではない。都市キャノピーの影響下での平均風速および乱流特性を明らかにするためにLESを実施し、設計風速の評価を行う。また、広域地形上の風の流れのLESを実施し、風の乱流場への地形の影響評価を行う。 環境に配慮した外壁を有する建築物を対象にしながら、LESを実施し、実験などでは一般に困難と考えられている、建物内外に生じる風の流れを評価し、環境性能を確認するとともに安全性の観点から微妙な流れ現象を踏まえた上で風荷重を算定する。 必要解像度と乱流モデル選定に基づく計算負荷の最適化を進める。蓄積された計算例に基づきながら、計算精度を吟味して最低限必要な計算条件を吟味する。計算負荷が低減されても十分な解が得られる計算領域、解像度の計算条件、ならびに乱流場を適切に再現するためのLESのSGSモデルの選定方法を提示する。荷重評価に対する風向変化の解析の効率的導入方法を検討する。風向によって建築物の空力特性の変化する様子を踏まえながら、計算が必要となる風向を予め選定する道筋を検討し、空力特性の風向依存性を効率的に把握する方法を提示する。
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