研究課題/領域番号 |
17H01304
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福和 伸夫 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (20238520)
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研究分担者 |
高橋 広人 (高橋広人) 名城大学, 理工学部, 准教授 (00650821)
平井 敬 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00708373)
都築 充雄 名古屋大学, 減災連携研究センター, 寄附研究部門准教授 (30645007)
倉田 和己 名古屋大学, 減災連携研究センター, 特任准教授 (50579604)
山崎 雅人 名古屋大学, 減災連携研究センター, 寄附研究部門准教授 (60628981)
飛田 潤 名古屋大学, 災害対策室, 教授 (90217521)
長江 拓也 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (90402932)
新井 伸夫 名古屋大学, 減災連携研究センター, 特任教授 (60647105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、国難ともいえる南海トラフ巨大地震の被害を抜本的に軽減するための総合的戦略研究を実施している。被害軽減の基本は、土地利用などの危険回避力、インフラ整備・建物耐震化・家具固定などの抵抗力、リアルタイム被害予測・対応資源把握に基づく対応力、速やかな復旧・復興などの回復力4つの力の向上にある。 平成29年度は、まず危険回避力を考える根拠となる強震動の予測を、グリーン関数の相反性を利用した有限差分法により、波動伝播経路と堆積盆地などと不整形地盤構造を考慮して高精度に評価することを始めた。また、南海トラフ地震の破壊開始点付近で発生した2016年4月1日の三重県南東沖の地震について、強震観測記録を可能な限り収集するとともに、有限差分法による解析の精度の検証を行った。 抵抗力向上のために、住宅の耐震化誘発手法の検討に着手した。具体的には、実大実験施設でもある名古屋大学減災館を利用して、AR/VR技術を既設の振動再現環境に組み合わせることで、任意地点・任意高さの建物内での地震動応答をスマートフォンアプリで体験するシステムを構築した。 対応力向上のために、地理情報システムとスマートフォンを利用したクラウド型の災害情報収集・対応資源把握システムの開発を行った。また、地震動の補間によるリアルタイム地震被害予測法の開発に着手した。 回復力向上のために、本音を語る会や西三河防災減災連携研究会を継続的に開催し、社会や産業構造のボトルネックの抽出と災害対応資源の把握を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、地震被害軽減のための危険回避力・抵抗力・対応力・回復力の向上を目指している。平成29年度は、前二者の向上のために、社会の致命的な災害病巣を検知し、その切除・治癒の方策をカルテ化し、全住民・企業の減災行動誘発法や処方箋として提示することを始めた。また、後二者の向上のために、産官学民での災害情報共有化と組織の態様に応じた事前復興計画や対応・復旧・復興タイムラインを策定することを目標とし、名古屋大学減災館の体感環境と最新のICT技術、産官学での本音を語る会での議論を活用することとした。 現在までの進捗状況として、危険回避力・抵抗力については、地震動予測のためのグリーン関数データベースの整備や可視化システムの開発を一通り終えており、これらをさらに高度化する取り組みを行っているところである。また、南海トラフ地震の地震動予測に必要な強震記録についても、数多く収集している。対応力・回復力については、従来からの本音を語る会を継続して開催し、常時災害対応のボトルネックを探る取り組みを行っている。 これらの成果を本研究課題の実施計画に照らし、進捗状況として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降、引き続き地震被害軽減のための危険回避力・抵抗力・対応力・回復力の向上を目指して研究を推進する。 危険回避力については、相反定理を活用した有限差分法のメリットを活かして、南海トラフ地震を対象に、震源域の広がりや強震動生成域の位置、破壊過程などによる変動を考慮しながらハザード強度についての基礎資料を蓄積する。さらに、推定した強震動を用いて、主に湾岸の主要な地点の地盤応答解析を行い、液状化や地盤沈下の程度などを評価する。 抵抗力向上については、主要製造業の工場について、構造躯体や二次部材などの健全性の事例研究を通し、その現状を把握して課題を抽出すると共に、その改修の方策を検討する。併せて、重要拠点に利用される既存の高層建物や免震建物の長周期地震動に対する性能向上法について検討を加える。さらに、気象庁が検討中の長周期地震動に対する緊急地震速報の高度利用により、長周期構造物の地震時対応方策を検討する。 対応力向上については、センシングデータとグリーン関数データベース、都市情報データベースを活用した高精度・高解像度のリアルタイム地震被害予測システムを整備し、防災科学技術研究所が開発を進めている国からのトップダウン型被害情報を組み合わせることを目指す。 回復力向上については、行政や産業界の事業継続計画を収集し、地域圏の横断的災害対応タイムラインを整備する。さらに、この成果を個別の基礎自治体や企業にフィードバックし、事業継続計画の見直しにつなげることを考える。
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