研究課題/領域番号 |
17H01322
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
是津 信行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10432519)
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研究分担者 |
手嶋 勝弥 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00402131)
林 文隆 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (20739536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / イオン結晶 / 表面・界面物性 / セミラックス |
研究実績の概要 |
板状結晶の組積構造集積化に関する要素技術の開発に取り組んだ。後述するフラックス育成した板状のLiNbO3結晶をモデル物質として用いた。バインダーには, PVDF,ポリプロピレンカーボネート,カーボンナノチューブ,ホウ酸リチウムをそれぞれ用い,構造粘性を制御したペーストを作製した。これを剥離剤付のポリエチレンシート上にブレードコーティングし,FE-SEMとXRDを用いて板状結晶の配列構造を調べた。これまでの検討結果では,カーボンナノチューブが,板状結晶の組積構造集積に有効であることがわかった。そのメカニズムについては現在調査中である。加えて,組積構造集積には板状結晶サイズの粒度分布と形状のバラつきが凝集体の形成を促進し,目的とする組積構造顕著に影響することがわかった。そこで,板状結晶の原料を見直し,粒度分布と形状の分布を狭小化することに成功した。これらの成果は,Crystal Growth Design誌に投稿し,minor revision の査読結果を受けて,現在修正版を再投稿中である。その他,ガーネット型Li5La3Nb2O12結晶を焼結したときに形成される粒界構造モデルと粒界におけるイオン伝導挙動をMD計算により解析した。熱安定性の高い傾角粒界においてバルクに匹敵する伝導度を示すなど,世界初の知見を見いだした。これらの成果は,Sci. Rep.誌に掲載された。また,Science誌を発行するAAASの運営する EurekAlert!で取り上げられ,掲載1週間の間に2,000人以上の研究者に閲覧されるなど,高く評価された。さらに,ガーネット型結晶とホウ酸リチウムガラスから成る混合固体電解質セパレータに関する成果は,IUMRS-ICAM2017において,Award for Encouragement of ResearchとACS OMEGA Awardを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガーネット型結晶の板状化や板状結晶の組積構造集積,混合固体電解質セパレータに関する基礎的知見の取得,粒界モデルの構築,粒界におけるイオン伝導挙動解析など,最終目的達成につながる要素技術を構築することができた。加えて,粒界におけるイオン伝導挙動に関しては,当初予想していなかった興味深い知見を得ることができたことから,おおむね順調,またはそれ以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究開発項目①:板状結晶の組積構造集積化:組積構造形成に及ぼす溶融ガラスの濡れ性や溶質に対する溶解度の効果を調べる。特に,網目修飾酸化物の添加や冷却速度の検討に注力する。加えて,必要にあわせLiCoO2板状結晶表面にCNTネットワークを形成する。摺動性の向上とペースト中における板状結晶の配列制御による組積構造集積に及ぼす効果を丹念に調べる。H31年度以降は,板状育成したガーネット型固体電解質板状結晶をリチウムイオン伝導ガラス内で組積構造集積化する。モデル板状結晶の組積構造集積化と同様のマイルストーンで研究を進める。加えて,得られたガーネット型固体電解質板状結晶/リチウムイオン伝導ガラスセラミックス複合体のセパレータ性能を評価する。最終的に,膜厚15μmの複合体焼結体において電流密度20mA/cm2でも長期使用可能なセパレータを目指す。層数や板状結晶のアスペクト比など,リチウムデンドライト耐性に及ぼす組積構造の効果を丹念に調べ,30年度内にLi5La3Nb2O12板状結晶で,31年度内にLi7-xLa3Zr2-xNxbO12およびその派生化合物で実現する。32年度からは,セパレータ層を合剤正極層に積層し,負極に金属リチウムを用いた全固体電池特性を評価する。 研究開発項目②:ガーネット型固体電解質結晶の板状育成 H29年度の知見を活かし,リチウム金属に対して安定なLi7-xLa3Zr2-xNbxO12の板状結晶を育成する。現時点では,前駆体の最有力候補としてLa2Zr2O7が考えられる。その他,計算科学的手法から,Li7-xLa3Zr2-xNbO12結晶の最も伝導度の高くなる組成やリチウム占有席,および占有率を予測する。
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備考 |
ガーネット型Li5La3Nb2O12結晶を焼結したときに形成される粒界構造モデルと粒界におけるイオン伝導挙動をMD計算により解析した。熱安定性の高い傾角粒界においてバルクに匹敵する伝導度を示すなど,世界初の知見を見いだした。これらの成果は,Sci. Rep.誌に掲載され,Science誌を発行するAAASの運営する EurekAlert!で取り上げられた。
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