研究実績の概要 |
生体内分解性インプラントは経時に伴い体内で分解されるため、抜去手術を必要としないデバイスとして注目されている。本研究ではインプラントの分解に伴う力学的強度をリアルタイムでモニタリングできるシステムの構築を目標としている。平成29年度には、第一原理計算に基づく分解性マグネシウム合金の最適組成設計、ヘテロ構造の形成を通じた強靱化の試行、蒸着による金属皮膜形成の予備的試行および分解性を評価するための研究を推進した。 分解性Mg合金の最適組成設計については、カルシウムならびに生体為害性が低い元素を第三元素として添加した場合の強度および変形能に及ぼす効果を第一原理計算により予測した。ここでは、三元Mg合金として、溶質元素および原子数; Ca: 1, 第三元素X (Mn, Mo, Co, Cu, Si, Ag, K, Sr, Ba): 1を設定し、粒界モデルには界面エネルギーが比較的高い対応粒界{11-21}を適用した。はじめに、偏析エネルギーを計算し、安定な原子配置を決定した。その後に、各合金の粒界凝集エネルギーを算出した。計算の結果、カリウムは粒界を脆化し、マンガンは粒界を強化する第三元素となることがわかった。計算結果に基づき、Mg-Ca-KおよびMg-Ca-Mn合金を作製し、機械的性質を評価した。その結果、これらの第三元素は強度に及ぼす影響は低いものの、破断ひずみはカリウム添加により減少し、マンガン添加合により増大することを確認した。第三元素が粒界強度へ及ぼす影響を計算により予測し、壊れにくくなる効果を実験により検証することができた。 金属皮膜の蒸着試験については、マグネシウム表面へシリコンを蒸着する予備試験を実施した。膜厚50nm~2μmの範囲で皮膜を形成し、その後に、E-MEM擬似体液中における分解性を定量評価したところ、表面被覆により分解性速度は低減可能であることを確認した。
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