研究実績の概要 |
生体内分解性インプラントは経時に伴い体内で分解されるため、抜去手術を必要としないデバイスとして注目されている。本研究ではインプラントの分解に伴う力学的強度をリアルタイムでモニタリングできるシステムの構築を目標としている。平成30年度には、第一原理計算に基づく分解性マグネシウム合金の最適組成設計およびヘテロ構造の形成を通じた強靱化に関する研究を継続して実施した。また、蒸着による検力センサーの実装試行および分解性を評価するための研究を推進した。 分解性マグネシウム合金の最適組成設計については、カルシウムならびに生体為害性が低い元素を第三元素として添加した場合の強度および変形能に及ぼす効果を第一原理計算により予測した。ここでは、溶質元素および原子数; Ca: 1, 第三元素X (Li, K, Sr, Ba, Zn, Mn, Mo, Zr, Cu, Ag, Si, Nd, Gd): 1を設定した。また、粒界モデルには{11-21}や{11-24}など複数種の対応粒界を選定し、第一原理計算により粒界エネルギーが高い粒界構造を決定した。次に、置換元素の偏析エネルギーを計算し、安定な原子配置を決定した。その後、各合金の粒界凝集エネルギーを算出し、破壊し難い合金元素種を決定した。計算により選定した合金を鋳造により試作した後に、強ひずみ加工を施すことにより、強靱化した細線材料を作製した。 センサーの作製については、電子ビーム(EB)蒸着およびスパッタリングの二通りの手法により実施した。ここでは、検力センサーのパターンを形成する方法およびセンサー膜中の不純物が分解速度に及ぼす影響を評価した。擬似体液にハンクス液を用いて試験体を浸漬し、経時に伴う体積減少を確認した。また、検力センサーを実装した試験体に曲げ応力を負荷し、センサーの出力について測定することにより、検力性能を検証した。
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