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2019 年度 実績報告書

超高倍率X線顕微鏡が拓く3D/4Dメゾスケール材料科学

研究課題

研究課題/領域番号 17H01328
研究機関九州大学

研究代表者

戸田 裕之  九州大学, 工学研究院, 教授 (70293751)

研究分担者 小林 正和  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378243)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード強度・破壊靭性 / 可視・評価技術
研究実績の概要

本研究では、大別して、①4Dイメージング周辺技術の整備、②先端3Dイメージング実験技術の開発、③4D画像の定量解析技術の開拓、および3D画像の応用解析技術の整備の3点から研究課題にアプローチしている。これにより、SPring-8の優れたシンクロトロン放射光技術が材料工学、機械工学の分野で優れた応用成果に結び付くよう、基盤技術を先導する事が目的である。
SPring-8のBL20XUにおいてX線エネルギー30keVの超高分解能X線顕微鏡実験を申請段階の研究計画より1年間程度前倒しすることができ、既に前年度内に実施済みである。本年度は、この高分解能化、高コントラスト化、アーティファクト低減、ノイズ低減を行うため、セットアップをさらに改善した。具体的には、コンデンサー用ゾーンプレートの変更(多角形化)による高フラックス化、撮像条件の最適化などである。
応用研究のTRIP鋼の研究では、試料全体にわたる相変態および損傷・破壊挙動へ及ぼす変態の影響を理解するために、超高分解能X線顕微鏡法によるその場引張試験を行うと同時に、1μmまで絞ったビームを用いたXRD実験を行った。また、これに必要な上記③の開発と適用も行った。一連の研究データは概ね解析が終了し、実用的なレベルの結晶組織を持つTRIP鋼の引張負荷下の相変態挙動を明らかにする興味深いデータが出ている。この成果は、早急に論文化を行う予定である。また、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の変形時の各種トラップサイト間の水素の再分配挙動についても高精度化した。そのため、η2析出物、および金属間化合物粒子のトラップサイトを特定すると共に、正確なトラップエネルギーを求め、合わせて負荷下のトラップエネルギーの変化、亀裂先端のトラップ組織変化などの情報を取り入れた高精度な水素分配計算を実施した。これも、次年度早々に論文化を実施する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

前年度までに計画を1年間程度前倒しして行ったX線エネルギー20~30keVのX線顕微鏡では、追加の実験を繰り返すことで、それらイメージングの条件の調整、実験セットアップの改良等も当初計画よりかなり先行した形で進行した。最終年度に計画していたペンシルビームを用いたX線回折実験と開発した高分解能4Dイメージングを組み合わせる応用研究を本年度に前倒しで行い、その解析も概ね終了した。現在の進行状況は、初期のタイムスケジュールより依然として1年程度先行しており、また計画よりも装置の精度、解析の精緻さなどの点で高度なレベルで達成されているものと判断する。
また、開発した4Dイメージング周辺技術、3Dイメージング実験技術、および3D/4D画像の基盤・応用解析技術の応用研究に関しても、主に最終年度に企画していた所、TRIP鋼、およびAl-Zn-Mg高力アルミニウム合金に関して、一通りの実施を行った。いずれの場合も、材料科学的に興味深い生かが得られており、これにより開発手法の優秀さがわかる。

今後の研究の推進方策

SPring-8のBL20XUにおいてX線エネルギー30keVの超高分解能X線顕微鏡実験を行うに辺り、さらなる高コントラスト化、アーティファクト低減などを睨んだ研究を行う。具体的には、Zernike法ではなく、Schlieren法による位相コントラストイメージングを試行することで、さらなる高コントラスト化が可能か検討する。また、応用研究では、TRIP鋼の相変態および損傷・破壊挙動へ及ぼす変態の影響を理解するために、超高分解能X線顕微鏡法によるその場引張試験と1μmまで絞ったビームを用いたXRD実験を組み合わせる研究を深化させる。具体的には、非常に計測時間のかかる前者の実験に関し、撮像シーケンスの改良や高速ステージの導入による高速化を図る。また、Al-Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金の変形時の各種トラップサイト間の水素の再分配挙動についても、その防止法や延性破壊への影響にまで踏み込んだ解析を行い、手法のメリットデメリットを明らかにする。
本年度は、中国人ポスドク1名を雇用して応用研究を推進する計画であった、しかしながら、新型コロナウィルスの流行で渡日が大幅に遅れる見通しとなっている。また、この様式の記入日現在、主力の実験装置であるSPring-8が閉鎖されており、2020年度の大型放射光実験をいつ行えるのか目処が立たない状況にある。しかしながら、ポスドク来日の遅れは周囲の学生、職員の協力でカバーすることで対応する。また、2019年度の最後には、2019年度の研究成果を反映し、実験セットアップを可能な限り改善した実験データを取得済みである。これは、2019年度にも研究したTRIP鋼の変形・変態挙動に関するデータである。このデータの解析を進めることで、今年度前半に万一、大型放射光実験ができなかったと仮定しても、研究計画に対して遅れることがないように対応できる見込みである。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 3D imaging of polycrystalline structure using diffraction contrast tomography2019

    • 著者名/発表者名
      Hirayama Kyosuke
    • 雑誌名

      Journal of Japan Institute of Light Metals

      巻: 69 ページ: 587~590

    • DOI

      https://doi.org/10.2464/jilm.69.587

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hydrogen partitioning behavior and related hydrogen embrittlement in Al-Zn-Mg alloys2019

    • 著者名/発表者名
      Shimizu Kazuyuki、Toda Hiroyuki、Fujihara Hiro、Hirayama Kyosuke、Uesugi Kentaro、Takeuchi Akihisa
    • 雑誌名

      Engineering Fracture Mechanics

      巻: 216 ページ: 106503~106503

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.engfracmech.2019.106503

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Assessment of hydrogen embrittlement via image-based techniques in Al-Zn-Mg-Cu aluminum alloys2019

    • 著者名/発表者名
      Su Hang、Toda Hiroyuki、Shimizu Kazuyuki、Uesugi Kentaro、Takeuchi Akihisa、Watanabe Yoshio
    • 雑誌名

      Acta Materialia

      巻: 176 ページ: 96~108

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.actamat.2019.06.056

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hydrogen desorption behavior in Al-8%Zn-1%Mg alloy2019

    • 著者名/発表者名
      Fujihara Hiro、Toda Hiroyuki、Shimizu Kazuyuki、Takeuchi Akihisa、Uesugi Kentaro
    • 雑誌名

      Journal of Japan Institute of Light Metals

      巻: 69 ページ: 186~193

    • DOI

      https://doi.org/10.2464/jilm.69.186

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 4D characterization of the stress corrosion cracking behavior in Al-10Mg aluminium alloy via synchrotron X-ray tomography2019

    • 著者名/発表者名
      Fu, D., Toda, H., Su, H., Hirayama, K., Uesugi, K., Takeuchi, A.
    • 学会等名
      The International Offshore and Polar Engineering Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 3D/4Dイメージングによるフェライト/オーステナイト鋼の加工誘起変態・損傷挙動の直接可視化2019

    • 著者名/発表者名
      平山 恭介,泉田 恭輔,戸田 裕之,竹田 健吾,林 邦夫,上杉 健太朗,竹内 明久
    • 学会等名
      日本機械学会 M&M2019材料力学カンファレンス
  • [学会発表] 極細束X線回折によるフェライト/オーステナイト鋼の加工誘起変態挙動の評価2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木 尚史, 平山 恭介,戸田 裕之,竹田 健悟 , 林 邦夫,上杉 健太朗,竹内 晃久
    • 学会等名
      日本機械学会 M&M2019材料力学カンファレンス
  • [学会発表] 高Zn Al-Zn-Mg-Cu合金における水素分配挙動と擬へき開破壊2019

    • 著者名/発表者名
      清水一行,戸田裕之,蘇航,竹内晃久
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第177回春季講演大会
  • [学会発表] Assessment of 3D short crack closure in Ti-6Al-4V alloy utilizing synchorotron X-ray microtomography2019

    • 著者名/発表者名
      V. Tubei, M. Hassanipour, S. Watanabe, K. Hirayama, H. Toda, A. Takeuchi, K. Uesugi
    • 学会等名
      金属学会・鉄鋼協会・軽金属学会九州支部合同学術講演会
  • [学会発表] Al-Zn-Mg合金の水素分配挙動と擬へき開破壊2019

    • 著者名/発表者名
      日高純真, 戸田裕之, 清水一行, 藤原比呂, 上杉健太朗, 竹内晃久
    • 学会等名
      軽金属学会第137回秋期大会
  • [学会発表] Al-Zn-Mg-Cu合金における水素誘起ナノボイドの発生・成長挙動2019

    • 著者名/発表者名
      清水一行, 戸田裕之, 平山恭介, 藤原比呂, 門川千宙, 上杉健太朗, 竹内晃久
    • 学会等名
      軽金属学会第137回秋期大会
  • [学会発表] Recent Progress in High Resolution X-ray Tomography at High X-ray Energies2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki TODA
    • 学会等名
      The 10th Pacific Rim International Conference on Advance Materials and Processing (PRICM-10)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 3D/4D Hydrogen Embrittlrment Behaviour in Al-10Zn-2.4Mg alloys2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki TODA
    • 学会等名
      The 9th international light metals technology conference
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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