研究課題
孔食およびすき間腐食に関し、腐食萌芽の再不働態化を促進し、ステンレス鋼の耐局部腐食性を大幅に向上させる手法として、1)Mo濃化相を分散させたステンレス鋼と、2)金属窒化物を分散させたステンレス鋼を開発した。いずれの技術も特許申請を行った。開発した高耐食化技術の具体例としては、SUS316Lステンレス鋼(Fe-17Cr-12Ni-2.5Mo)と同一合金量でありながら、Moを均一に鋼に固溶させるのではなく、Mo濃化相として第二相の形態で分散させるというものである。これにより、0.1mol/L NaCl中での孔食電位が大幅に向上することを見出した。同様に、SUS316LNステンレス鋼(Fe-17Cr-12Ni-2.5Mo-0.2N)に対しても、Nを固溶ではなく、窒化物として鋼中に分散させることで耐局部腐食性が向上することを発見した。また、上述した研究開発の過程で、各種鋼材の局部腐食発生の起点はMnS介在物であり、そこを起点とする局部活性溶解を抑制する合金元素としては、Mo、N、Cが有効であることを見出すと共に、それらの作用機構を解明した。第一原理計算と電気化学計測の結果から、固溶Cと固溶Nには、Fe原子の電子濃度を低下させ、活性溶解に関与する電子濃度を低下させる作用があることが分かった。また、Nは、鋼から活性溶解した際に、アンモニウムイオンや亜硝酸イオンに変化し、腐食抑制剤として機能することも分かった。Moには、MnSを起点とする局部活性溶解の反応速度を大幅に低下させる作用があることをマイクロ電気化学システムを用いた研究により解明した。さらに、MnS介在物を起点とする孔食に及ぼす負荷応力の影響も調査した。そして、引張応力は、NaCl水溶液中でのステンレス鋼の自然浸漬電位近傍において、MnSのアノード溶解を加速する作用を有することを解明した。
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