研究課題/領域番号 |
17H01334
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30137252)
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研究分担者 |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00335192)
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 嘱託教授 (10156862)
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (30463798)
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70315258)
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結晶・組織制御 / ナノ結晶材料 / アモルファス合金 |
研究実績の概要 |
ナノ結晶合金やアモルファス合金は結晶粒の超微細化等により極端に高強度化・硬質化しており、塑性変形中の加工硬化メカニズムは存在しない。このため、引張変形中にせん断帯が局所的に形成され、脆性的に破壊する。本研究ではこれまでに、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有するNi-W系のナノヘテロ材料を開発し、応力誘起のナノ結晶粒成長による局所的硬化を生じさせ、加工硬化の発現と大きな塑性変形を発現させることができた。また、Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラス合金においても、微量なAu, Pd等を添加すると、ナノ準結晶相の析出が容易となり、応力誘起のナノ準結晶相の析出による加工硬化の発現が認められ、圧縮変形時に大きな塑性変形を発現できることを明らかにした。このような結果を得て、上記材料の実用化に向けた研究にも着手している。 このような応力誘起によるナノ結晶粒成長やナノ準結晶相の析出には、アモルファス母相中に原子拡散を促進するための過剰なフリーボリュームの存在が必要である。しかしながら、これらナノヘテロ材料は、常温で放置しておいても体積収縮を伴うフリーボリュームの放出が生じ、徐々に応力誘起変態が生じ難くなる欠点を有する。 このように、応力誘起の相変態を容易に起こさせる材料は、同時に、常温付近の低い温度領域でも時効硬化が徐々に生じて、応力誘起による加工硬化は徐々に認められなくなり、高い延性能は消失する傾向ある。今後は、これらの問題を解決するため、熱的に安定な結晶相と時効硬化性のあるナノ結晶/アモルファス複合組織を有するナノヘテロ材料をマイクロメータサイズに積層化する等の方法により、これら材料の実用化に必要な温度領域での体積収縮を伴う組織変化を抑制する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまでに、ナノ結晶/アモルファス複合組織を有するNi-W系合金において、応力誘起のナノ結晶粒成長による局所的硬化を生じさせ、加工硬化の発現と大きな塑性変形を発現でき、これら材料の塑性変形機構の解明にまで研究を進めることができた。このため、Ni-W系合金においては複数の企業を含めて実用化研究の準備が進んでおり、マイクロ機械部品、マイクロ金型等の開発を検討している。 一方、ナノ結晶/アモルファス複合合金に見られる応力誘起によるナノ結晶粒成長の発現には、アモルファス母相中に原子拡散を促進するための過剰のフリーボリュームが必要である。しかしながら、これらナノヘテロ材料は、常温で放置しておいてもフリーボリュームの放出が生じ、徐々に応力誘起ナノ結晶粒成長が生じ難くなる欠点を有する。 このような応力誘起のナノ結晶粒成長を容易に起こさせる材料は、同時に、常温を含めた低い温度領域でも時効硬化が徐々に生じて、塑性変形時の応力誘起による加工硬化は認められなくなり、高い延性は認められなくなる傾向が明らかとなった。このような現象は、試料作製直後の大きな塑性変形能と、これら材料の耐熱性・耐久性とが相互にトレードオフの関係にあり、実用化への大きな障害となる。これらの問題を解決するため、熱的に安定な結晶相と時効硬化性のあるナノヘテロ材料をマイクロメータサイズに積層化する等により、常温での体積収縮を伴う組織変化を抑制するなどの複合組織化を検討した。実際に、Ni-W合金相と純Ni相を1ミクロン間隔で交互に積層することにより、構造緩和の抑制と体積収集を抑制できることが確認できた。Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラス合金においても、微量なAu, Pd等を添加すると、ナノ準結晶相の析出が容易となり、応力誘起のナノ準結晶相の析出による加工硬化の発現が認められ、安定相との積層化による組織の最適化を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ結晶/アモルファス複合合金の引張塑性変形量は、アモルファス母中原子拡散を伴ったナノ結晶粒成長に起因する加工硬化挙動に依存し、残留する過剰なフリーボリューム量に依存する。このようなフリーボリュームは、常温でも徐々に放出することから加工硬化性能が減少し、塑性変形伸びが時間とともに減少する。このため、以下の項目のついて検討を行う。 1)電析Ni-W合金を用いて、W含有量を制御することにより、ナノ結晶単相材、アモファス単相材および、ナノ結晶/アモルファス複合材料を作製し、これら合金の熱収縮挙動を熱機械試験機(TMA)を用いて検討する。これら合金の収縮量と引張強度と塑性変形伸びとの相関性を明らかにする。さらに、安定なfcc結晶構造を有する純Niもしくはナノヘテロ構造を有するNi-W合金をマイクロメータサイズに積層電析材を作製する。Ni相は細密充填構造で熱収縮はほとんど認められず、Ni-W相は過剰なフリーボリュームの放出により収縮する。これらを積層化することにより、Ni-W相の収縮が抑制できることが予想される(山崎) 2)上記の積層合金を用いて最適積層厚さを検討する。TMAによる収縮挙動を測定するとともに、常温から300℃付近までの温度で熱処理を行い、収縮量と引張試験による強度と塑性変形量との関係を検討する。また、放射光による積層材の引張試験中の各相のピークシフト量を測定し、各相の応力分配、残留応力を検討し、最適積層厚さを検討する。(山崎、足立、網谷) 3)窒素雰囲気中でのMAやガスアトマイズ法等により、Fe-TiN, Ni-TiN, Zr-TiN系等のナノヘテロ構造を有する合金粉末の作製を検討し、安定な金属結晶構相とナノヘテロ構造造との複合組織を有するバルク材の作製について検討する。上述の合金を用いたマイクロ金属金型の作製等についても検討する(網谷、三浦、加藤、山崎)。
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