研究実績の概要 |
電場印加時には,プロトン伝導は反応を促進させるのに重要な因子であることがここまでの検討でわかってきた。さらに,プロトン伝導は主に触媒の担体上で起こるため,担体中への異種金属ドープによって担体表面上のプロトン伝導,さらに電場中の活性を向上させることを狙った。CeO2に異種金属M(Ca, Ba, La, Y or Al)を少量ドープした担体上に1.0 wt%Pdを担持した触媒(以下1.0 wt%Pd/Ce1-xMxO2-δ, x = 0 or 0.1)を用いて,活性試験やキャラクタリゼーションを行った。Pd/CeO2とPd/Al-CeO2を比較すると,Pd/Al-CeO2の方が低温域での伝導度上昇分が大きく,また伝導度の絶対値も増加し,この上昇分はプロトン伝導の増加分に起因する。つまり,反応条件下では,Pd/Al-CeO2の方がPd/CeO2よりもプロトン伝導が大きい。よって,CeO2へのAlドープによってプロトン伝導が促進されるということが示された。プロトン伝導は,表面吸着した水分子のO-H伸縮結合の強さと,その吸着量という2つの因子によって評価される。結合が弱いほどプロトンは移動しやすくなり,吸着量が増えるほど移動するプロトンが増加するため,プロトン伝導は増加すると考えられる。そのため,Pd/CeO2とPd/Al-CeO2を用いてDRIFTS試験およびTGを行い,2つの因子をそれぞれ評価した。DRIFTSより,Pd/CeO2上に吸着した水分子のO-H伸縮結合の強さはPd/Al-CeO2上のものと同じであると考えられ,プロトンの移動のしやすさに大きな差はなかった。次に,TGより,Pd/Al-CeO2ではプロトン伝導が上昇した原因は,O-H伸縮結合が弱まったからではなく,Alドープによって水の吸着量が増加し,それに伴いプロトン伝導も上昇し,最終的に電場印加中での活性が向上した。
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