研究課題/領域番号 |
17H01345
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 克敏 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50302956)
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研究分担者 |
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 接着 / 機能表面 / タンパク質 / 接着状態 / 原子間力顕微鏡 / 抗菌 / 細胞接着 |
研究実績の概要 |
高付着性細菌から発見されたナノファイバータンパク質AtaAは、様々な材料表面に対し驚異的な接着力を示す。本研究では、接着機能ドメインであることが示唆されているNheadに機能性ペプチドやタンパク質を融合し、化学修飾をしていない材料基盤に水中接触させるだけで固定し、産業、再生医療分野等で待望の機能性表面を創造することを目的とする。また同時に、Nhead-ペプチド/タンパク質融合体と表面との結合状態(分子数・向き・積層状態・変形状態・融合機能分子-表面相互作用)を解明するとともに、それらを自在に制御する手法を世界で初めて創出する。平成29年度は、機能表面の創出とNheadの接着状態の計測を実施した。 (1)機能表面の創出 抗菌表面:スライドガラスに、NheadのC末端にSNAPタグを融合したNhead-SNAPとベンジルグアニン(BG)修飾した抗菌ペプチドを順次滴下して固定した。そのスライドガラス表面上に緑膿菌を滴下しLive/Dead染色したところ、抗菌ペプチドを固定化していないスライドガラスと比べ緑膿菌の膜透過性の向上が確認された。細胞選択性機能表面:まずは細胞選択性ペプチドを付加していないNheadのみを固定化した表面が動物細胞の接着や増殖に影響を与えるか検討した。Nheadの固定化密度や培地条件によっては、動物細胞の接着を促進または抑制することが明らかになった。 (2)Nheadの接着状態の計測 原子間力顕微鏡(AFM)で基盤表面に接着したNheadをイメージングするため、基盤材料の種類やNheadを接着させる温度、濃度、時間などの条件を検討した。ガラス表面に接着したNheadを1分子レベルで観察し、接着状態に関する知見を得た。また、温度によってNheadの接着量が大きく変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のひとつであった、分子動力学シミュレーションによる解析は開始できなかった一方で、予想外ではあるが、温度によって材料表面に対するAtaAの接着量が大きく変化するという重要な事実が新しく明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
下記の3項目を実施する。 (1)Nheadの接着状態のシミュレーション:Nheadの接着状態を全原子分子動力学(MD)計算に基づいた熱力学積分法によってシミュレーションする。まず、回転半径、絡み合い点間分子量、密度等の高分子基本物性を再現できるポリスチレンの全原子MD計算を行い、基盤材料の構造を得る。これにNheadの結晶構造と電解質水溶液を付加し、系を構成する。様々なRでのMD計算を実行して基盤と蛋白質の間に働く力の平均値<F(R)>を求め、この平均力の積分から自由エネルギープロフィールΔG(R)を得る。 (2)Nhead/Nhead複合体の接着状態の計測と制御:機能分子で修飾した表面を創造する際に重要なファクターとなる接着分子数や配向、積層状態、蛋白質の変形状態、機能分子と表面との相互作用を明らかにするため、接着タグとして機能するNhead、さらには機能性分子を融合した複合体の接着性や配向を、下記により調べる。 1)AFMでの水中イメージングにより、表面に固定したNhead融合体の向きを調べる。2)各種材料表面に対するNhead/Nhead複合体の親和性、積層状態、接着に伴う変性の有無等をQCM-Dにより調べる。 (3)機能表面の創出:引き続き、Nhead固定化表面が動物細胞の接着や増殖に与える影響を調べる。さらに、NheadまたはNhead融合体を介して細胞選択性ペプチドを既成のポリマー表面に水中固定し、得られた修飾表面に各種動物細胞を作用させ、融合体の細胞選択性や効果を検証する。
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