研究課題/領域番号 |
17H01353
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
船木 一幸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50311171)
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研究分担者 |
窪田 健一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10723364)
渡邊 裕樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (30648390)
張 科寅 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (40710596)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / プラズマ・核融合 / 衛星推進 / ホールスラスタ / ホローカソード |
研究実績の概要 |
電気推進ロケットエンジンは、その燃費(比推力)や効率の良さから小型のものは既に実用化し、深宇宙探査機の推進系や静止衛星の南北軌道制御に広く使われているが、衛星主推進を担うための大出力化が期待されている。ホールスラスタ等の大出力電気推進の最大の課題は、大電流動作が求められる中和器(電子放出装置)の損耗であり、出力増に従って急激に増加する中和器損耗が大出力電気推進の実現を阻んでいた。本研究では、大型人工衛星の主推進として期待される500mNクラスホールスラスタ用のための中和器を新規に開発し、放電電流30Aまでの高電流領域における安定動作を実現した。その一方、放電電流5A以下の低電流域では、中和器の動作が不安定性化し、中和器電流が1MHzといった比較的高周波領域で揺動して高い放電電圧ならびにキーパー電圧を示した。安定性不安定性の境界は、安定(スポット)モードと不安定(プルーム)モードとそれぞれ判断しているが、不安定動作状態におけるモデル解析からは、中和器から放出されるプラズマ流中のイオン音波不安定性が励起されていると予測されている。今後は、中和器動作の不安定性の程度と損耗寿命特性との相関を明らかにし、広い動作領域にて低損耗な設計を目指す。この他、中和器から放出されるプラズマの探針法による直接診断と、レーザーによる非接触プラズマ診断とをそれぞれシステムとして構築し、探針法による診断については主要な動作条件による密度・温度・電位等のプラズマ諸特性とその時間変動状況を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型人工衛星の主推進として期待される500mNクラスホールスラスタ用のための中和器を新規に開発し、動作特性の実験による取得や解析、そしてプラズマ診断の準備等が順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
1)大電流中和器(ホローカソード)の乱流現象ならびに損耗メカニズムの解明と、2)低損耗大電流作動中和器の実験実証の、 二つの研究を進める。平成30年度は、プラズマシミュレーション、ならびに、プラズマ計測を含む実験室実験との比較を広範囲に実施して、乱流ならびに損耗特性と高エネルギイオン分布の特性との相関(スケーリング)を確立する。このスケーリングに沿って設計製作されたホローカソード実験により、中和器プラズマの不安定性抑制と、低損耗化実験に挑む。
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