研究課題/領域番号 |
17H01354
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
粟飯原 周二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10373599)
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研究分担者 |
鈴木 克幸 東京大学, 人工物工学研究センター, 教授 (10235939)
柴沼 一樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30611826)
川畑 友弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50746815)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 破壊力学 / 脆性破壊 / き裂伝播 / 数値モデル |
研究実績の概要 |
本研究は大型コンテナ船をはじめとする溶接構造物における脆性破壊を防止する技術を確立するための基礎研究で、特に、脆性き裂伝播の制御を対象とする。 部材スケールの脆性亀裂伝播現象を再現するために,微視的なへき開破壊の破面形成メカニズムを参考にして,破面形成の不均一(凹凸)を再現可能なモデルの開発を行った.本モデルに亀裂伝播に伴う塑性拘束の緩和効果を実装することで,小型3点曲げ試験および中規模脆性亀裂アレスト試験の破面形成形態および亀裂停止位置を高精度に予測可能であることを示した.これによって複雑な3次元形状を有するき裂にも適用可能な脆性き裂伝播モデルの基礎を確立した。 拡張有限要素法に基づく結晶粒スケールの劈開亀裂伝播モデルの開発を行った.本モデルは小規模降伏を仮定できる一方,3次元空間上の幾何学的な極めて複雑な破面形成を伴うという劈開亀裂伝播に対して,亀裂形状と有限要素を独立に定義でき線形解析に強みのある拡張有限要素法の特徴を最大限に利用したものである.モデルの妥当性検証として,電子線後方散乱回折(EBSD)によって得られた実破面破面の法線方向の確率密度分布を,提案モデルによる計算結果と比較した結果,両者は良い一致を示し,極めて複雑な結晶粒スケールの劈開亀裂伝播を初めて定量的に再現可能なモデルの開発に成功した.これによって脆性き裂伝播・アレスト特性とミクロ組織因子を結びつける端緒を築いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では脆性き裂の伝播とアレスト(き裂停止)の現象をマクロ的、及び、ミクロ的観点から研究し、複雑な形状と材質不均一を有する溶接構造部材における脆性破壊を制御する技術の基礎を確立することであり、上記の研究概要にも記したとおり、マクロ的観点の研究では拡張有限要素法などを用いた手法を開発することによって3次元複雑形状を有するき裂に対しても適用可能なモデルの基礎を築いた。一方のマクロ的観点の研究では結晶粒レベルのき裂伝播挙動を正確に記述するモデルの基礎を築いた。 上記のとおり、当初の計画に沿った進捗をしているものと判断しているが、最終年度における実験検証によってモデルの見直しを行い、実用可能なモデルに仕上げていく。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに開発したモデルを用いて,材料・構造設計に指針を与える検証を実施する.具体的には,部材スケール亀裂伝播モデルを用いることで,巨視的な破面の凹凸が亀裂停止性能に及ぼす影響を検証するとともに,その効果を実験で確認する.さらに,拡張有限要素法に基づく結晶粒スケールモデルを用いることで,最も基本的な材料組織因子である結晶粒径が亀裂停止性能に及ぼす影響について,モデルによる予測とその結果の妥当性確認のための実験を実施する. 最終年度では部材の脆性き裂伝播試験によって上記モデルの妥当性検証を行い、最終的に、3次元的に複雑な形状を有し、材質の不均一性、溶接残留応力を有する溶接部における脆性き裂の伝播挙動をミクロ組織因子も含めて解析するシステムの基礎を築くことを目指す。
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