研究課題/領域番号 |
17H01360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
徳永 朋祥 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (70237072)
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研究分担者 |
愛知 正温 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (40645917)
後藤 宏樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (50781449)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地殻工学 / 地下流体挙動 |
研究実績の概要 |
本年度の成果は以下のようにまとめられる。 1.多孔質弾性体中の二相流動-溶存物質浸透-変形-熱輸送の連成現象の解析理論を熱力学的考察および思考実験に基づき導出するとともに、連成解析のための数値解析コードの計算フロー設計を行った。 浸透現象における反射係数の塩濃度依存性については先行し、Bresler(1973)の理論に基づきコードを構築した。 また、連成解析は、これまであまりデータの蓄積がない物性パラメータの設定を地質媒体の不均質性の影響も含めて非常に多く必要とするため、それらの不確実性を可視化しながら逆解析する手法についても検討し、遺伝的アルゴリズムに基づいて推定する手法を構築した。 2.半透膜性を持つ泥岩中での圧力・濃度挙動および岩石の変形を記述する数理モデルを作成し、作成したモデルをもとに数値計算を行い、計算結果に多孔質弾性体的な挙動と半透膜的な挙動を確認した。また、ひずみゲージを貼り付けた泥岩試料を用いて室内実験を行い、実験から得られた歪の挙動と計算結果の比較により、二つの結果の間に整合性を確認できた。 3.極めて遅い流れ場での空間的に不均質な二相流体流動に伴う変形過程の検討に向けて、水で飽和した泥質岩中に極めて遅い流量でガスを圧入する予察的室内実験を実施した。空間的に不均質な二相流体流動として、コア試料の中心軸に沿った局所的なガスの流動を仮定し、変形-二相流体流動連成解析を実施したものの、実験結果は再現されなかった。ガスの流路のパターンの単純さが原因となった可能性があり、今後ガスの流路としてより現実に近いものを適用し、解析を試みる必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗については、概ね予定通りである。 ただし、以下の点について、課題が明確になっている。 1.反射係数の塩濃度依存性の計算コードについては、連成解析コードに組み込むためには、物質量保存式の計算フローとの整合性の問題や、数値安定性の問題があることが明らかとなった。これらの点は、次年度以降も引き続き検討を継続し、改良していく必要がある。 2.化学的浸透に関連する室内実験の結果には、大きな計測誤差が含まれており、数理モデルと比較しながら詳細に議論するには、実験系の見直しを行う必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、現時点では以下のように研究を進める予定である。 1.2018年度に、連成解析コードの構築と動作検証を行う予定である。 2.ひずみゲージを用いた歪計測では計測に不安定性がみられたため、安定した歪計測を行い、その上で、数理モデルの妥当性についてより詳細な検証を行う。安定した歪計測として、現在は光ファイバーセンシング技術を用いることを検討している。 3.泥岩の半透膜性が泥岩中の物質移行に及ぼす影響について、理論の見直しや既往研究で報告されている値の整理といった文献調査を行う。 4.水で飽和した泥質岩中に極めて遅い流量でガスを圧入する実験を実施し、流動と変形に関するデータ取得を試みる。また、空間的に不均質な二相流体流動と変形を連成させた数値シミュレーションを試行する。
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