研究課題
本年度は、以下の結果を得た。(1) 太平洋全域の深海掘削コアの試料について、主成分・微量元素組成分析結果とイクチオリス層序年代結果の総合的な解析に着手した。その結果、太平洋全域においてレアアース泥が化学的特徴の異なる二つの層から成る共通の化学層序を示すことが確認された。そして、太平洋レアアース泥のレアアース濃集が、漸新世以前には生物源リン酸カルシウムの過剰な供給によってもたらされ、それ以降は一定の生物源リン酸カルシウム供給の下での堆積速度の低下によりもたらされていることが明らかとなった。また、中新世から現在に向かって大陸源物質の供給が卓越することで堆積速度が上昇し、レアアース濃度が時代と共に低下していることもわかった。興味深いことに、これらの時代は新生代のグローバルな気候変動の大きな転換点として知られる時代であり、レアアース泥の形成が全球的な気候の変動と密接にリンクしていることが初めて明らかとなった。(2) 南鳥島EEZのマンガンノジュール試料については、核の鉱物分析および主成分・微量元素分析結果の解析を行った、その結果、南鳥島ノジュールの核は主に鉄石、燐灰岩、火山岩、凝灰岩、珪岩、泥岩からなることが明らかとなった。このうち、鉄石、燐灰岩、火山岩、凝灰岩については、明らかに周辺の海山からもたらされたものであることが明白である。また珪岩については,瑪瑙・水晶を含む石英脈の破片であることが明らかとなり、これも海山における火成活動の産物と解釈された.さらに泥石についても、化学組成分析の結果南鳥島EEZの海底に分布する泥とは明らかに組成の異なるものが多数含まれていることが明らかとなった。このことから、泥岩の核についても海山から供給されたものである可能性が高いことが明らかとなり、マンガンノジュールの形成には、海山の崩落による岩片等の核となる物質の供給が必須であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
試料の採取およびそれらの分析・解析、レアアース泥の分析データ解析および年代決定については、当初計画どおり順調に進展している。今年度は、これらの分析の順調な進展によって、予定よりも早く考察を進めることができ、その結果太平洋レアアース泥の形成史の全貌と、その新生代気候変動との関連がほぼ解明できるところまで到達した。また,マンガンノジュール核の集中的な分析・解析という従来に無い新しいアプローチによって、初めてノジュール形成の必要条件を明らかにすることに成功した。これらを総括的に評価すれば、研究の進展は当初計画を上回っていると言える。
次年度も、引き続き試料の化学組成分析およびOs同位体分析並びにイクチオリス層序解析による年代決定を進める計画である。それに加えて,得られたデータの解析についてもさらに進めて行く予定であり、特に本研究の総仕上げとして「レアアース泥とマンガン酸化物鉱床の形成史およびこれらの資源の成因的関連の全容解明」に向けた考察にも踏み込んで行く所存である.また、これまでに得られた成果の論文発表についても、積極的に進めて行く予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 9件)
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