研究課題
本年度は、以下の結果を得た。(1) レアアース泥のイクチオリス層序年代の高精度化のために新たな手法の確立を行った。その結果、(a)泥試料からのイクチオリス採取の効率化、(b)イクチオリス鑑定のための新たなスライドグラス作成法の開発、(c)モンテカルロ・シミュレーションを利用したイクチオリス年代の絞り込み手法の改善、を通じて年代の高精度化を達成した。この手法を用いて得られた太平洋全域のODP/IODPコアの試料についての高精度年代データと、主成分・微量元素組成分析結果を統合して解析した結果、太平洋全域においてレアアースの濃集をもたらす生物源リン酸カルシウムの供給は、新生代を通じて一貫して減少していることが明らかとなった。一方、中新世から現在に向かって大陸源物質の供給が急激に卓越することも明らかとなった。この両者の組み合わせにより、太平洋の深海堆積物中のレアアース濃度は新生代を通じて基本的には低下を続けてきており、特に大陸源物質による希釈の進む中新世以降は急激に低下していることが明らかとなった。(2) 南鳥島EEZのマンガンノジュール試料については、1mmの層厚で連続的にOs同位体分析を行い、高密度でOs層序年代を決定することに成功した。さらに、得られたOs層序年代をモンテカルロ・シミュレーションを利用して絞り込み、これまでよりも高精度の年代決定を行うこと、およびハイエイタスの規模の推定を行うことにも成功した。その結果、南鳥島マンガンノジュールが形成開始した時代が、下盤の堆積物の年代および同一海域のマンガンクラストの成長速度より推定されていた年代よりもかなり古いことが明らかとなった。さらに、南鳥島マンガンノジュールの成長は、中新世にかなり長期間に渡って成長を停止していた可能性が高いことも明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
レアアース泥、マンガンノジュールともに、新たに確立した年代決定手法によって当初計画よりも高密度かつ高精度で形成年代を決定することができた。これにより、考察についてもより詳細な議論が可能となり、考察の進展に多大な好影響がもたらされた。これらを総括的に評価すれば、研究の進展は当初計画を上回っていると言える。
最終年度である次年度は、本研究の総仕上げとしてレアアース泥とマンガン酸化物鉱床の形成史、およびこれらの資源の成因的関連の全容について包括的な考察を行う.また、これまでに得られた成果の論文発表についても、積極的に進めていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件)
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